しし座
相互貫入モード
アニミズム的発想
今週のしし座は、山形県米沢市にある「草木塔(そうもくとう)」のごとし。あるいは、自分と自分でないものが相互貫入して交じり合っていくような星回り。
草木塔とは、江戸時代に米沢藩のお屋敷が火事で焼失した際、山林の木々を大量に伐採するにあたって、樹木の霊を慰めるために作られた石碑のこと。
米沢のあたりはエゾ文化が目に見える形で存続した地域であり、その木こりたちも「木を切ることは木を殺すことである」という意識を強くもっていたことが伺われます。
日本には各地に包丁や眼鏡などの生活必需品を祭るお墓だったり、家畜の慰霊碑などはたくさんありますが、こうした植物にも動物と同じように心や意識があって、彼らを犠牲にして住む家をつくったり、生きるための燃料にしたりしているのだという物事の見方は、非常に根源的なアニミズム的発想と言えるでしょう。
まず豊かな大地があり、そこから何年も何十年もかけて樹木が育ち、それらを犠牲にしてさらに人間は家を築いて子供を育てていくのであり、したがって切り倒した樹木の霊は他もでない人間こそが植物霊の世界に送り返さなければならないし、少なくとも古代の日本人の一部は連綿とそうして生きてきたのです。
6月13日にしし座から数えて「自我の弱まりと他者との繋がり」を意味する8番目のうお座で、下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、普段なら強固に張り巡らせている他者との境界線がゆるまって、自分自身よりもむしろ何か誰かとの繋がりをこそ濃密に感じていけるはず。
贈与と負債の網目の中で
経済がグローバル化し、世界が単一の文化に覆い尽くされた「モノカルチャー」へまっしぐらになってしまった現代社会では、すべてを「交換」して生きていくことが可能とされ、経済的合理性や「コスパ」が推奨されて、それ以外のものを忘れさせられていきます。では、何を忘れさせられていくのか。
それはおそらく、自分たちが別のところから何か大事なものを「もらっている」という感覚や記憶でしょう。食料であれ、棲み処であれ、安心や自由や精神的成長であれ、それらは基本的に宇宙や地球からの絶対的贈与を受けることで成り立っているはずですが、本来なら贈与であるべきものが「想定外」とか単に「ネ申」の一言で片づけられて、「もらった」という記憶がきれいさっぱり削除されてしまったりする。
その結果として、根本的に自分たちが脆弱な存在で、たくさんの「贈与」を「負債」として抱えることでやっと成り立っているのだという認識や、「おかげさま」という感覚さえも忘れ去られていっているのではないでしょうか。
その意味で今週は、既に自分の一部であるところのものを改めて外部に発見していけるかも知れません。
今週のキーワード
植物霊