しし座
移動から現実を捉える
いかにして独自に経済圏を築くか
今週のしし座は、さながら中世の釣漁の村のごとし。あるいは、広い視野から自分なりの経済構造を見つめ直していくような星回り。
漁業を生業にしている漁師というと、地元の港との強い結びつきをどうしても想像してしまいますが、実際には1つの漁村が成立し、生活を打ち立てていくには実には広い生産活動の領域を必要としていたようです。
これは魚そのものが広い海を回遊していく生き物であり、1年のうちで季節ごとに取れる魚を然るべき漁場で仕入れ、さらにそれを市場や商人に売ったり、必要な物資と交換してしていく必要があったため。
こうした漁民が毎年繰り返す広い範囲にわたる移動について、民俗学者の宮本常一は「定期的な回帰性移動」と名付けていましたが、まさにこうした宮本のまなざし方そのものが、今のしし座のあなたにとっては大いに指針となっていくはず。
宮本のまなざしは常に1つの経済構造を同時に見つめている。生活に必要なものが自給自足でまかなえる社会と、それができず交易を介して初めて成り立つ社会と。
漁をするにもエサを取ってくれる仲間が必要で、交易する商人や、付き合いのある市場や、直接魚を買ってくれる客ともやりとりしていかねばならない。宮本はそれを踏まえて「だから漁業だけで生きている村の漁民は、実によく方々を歩いている」と書いたのです。
今のあなたもまた、自分がしたい生活を成り立たせていく上で、どれだけの人と付き合い、どれだけの生産領域が必要となってくるか、改めて考えてみるといいでしょう。
大事なのは様々な風景を繋いでいくこと
漁民に限らず、昔の人はとにかくよく歩いたと言います。
個人的にも、子供の頃に親戚のおばさんの家へ遊びに行った際、ちょっとそこまで花火を見に行こうと言われ気軽な気持ちで付いていったら、なんだかんだと2つの山を越えさせられて、花火を見る頃にはすっかりくたくたになってしまった思い出があります。
おそらく、地図の上で考えれば、実際そんなに大した距離ではなかったのだと思います。ただ、子供の頃の自分にとってはとてつもない旅であり、山を越えるたびに世界がどんどん変わっていったのをよく覚えています。
それはおそらく、場所から場所への距離感は同じでも、電車やバスや自動車の速度で物事を感じたり考えたりするのが当たり前になってしまった現在の自分には、見えてこない風景なのでしょう。
今週は、徒歩には徒歩なりの思考があり、一方で船にも船なりの思考があるのだということを、どうか思い出してください。
普段とは異なる速度や仕方で自分の現実について考えてみることで、「迅速性」や「効率」といった価値観からこぼれ落ちていたものが、不意に目に飛び込んでくるでしょう。
今週のキーワード
「経済」という言葉の語源