しし座
絡んだ紐のほどけゆく
「うつろ」から「うつろひ」へ
今週のしし座は、「春風にからだほどけてゆく紐か」(田中裕明)という句のごとし。あるいは、北風よりも太陽に身を開いて自分を崩していくような星回り。
しし座の人というのは、いつも自分を中身のつまった立派な自分でいさせようとするところがあって、つまりはやせ我慢の達人な訳ですが、今週はそんなこころの鎧を1枚いや2枚、3枚とぬぎ捨て、自分の中心を虚ろにしていくことができるかもしれません。
なにもない虚ろは、なんでもありえる「空」でもあって、人はそういうプロセスを経ることではじめて「うつろひ(移ろい)」の手続きを踏んでいくことができます。
ただそれは頭で季節の移り変わりを認識する前から、体のレベルですでに新たな季節へ適応していくように勢い込んでするものではなく、ただなんとなくそうなっていくもの。
朝ドアを開けたとき、街を歩いている時、ふいに春風に吹かれる心地よさを感じたなら、それは「うつろひ」の何よりのサインでもあります。
全身に入れていた力をゆるめ、緊張していた自分を開いて、さながら固形物としての自分を「紐」のように崩していく様をイメージしてみるといいでしょう。
子どもの脆弱性と可能性
例えば、「子ども」というのは不安定で次に何をするか分からない監視の対象であり、また「子ども騙し」に引っかかる大人は軽蔑されてしかるべきだということになっており、頼りなく壊れやすい存在の代表と言えます。
しかし一方で「子ども」というのは、その本質的な脆弱性ゆえに仮に外部から何らかの圧力をうけることがあっても、それでなかなか壊滅しきらないだけの内的充実があり、むしろ弱弱しいことそれ自体のなかに、まるで異質な振動体のような、あるいは語る言葉がそのまま哲学となり得るような、「火つけ役」としての可能性を秘めているように思います。
火をつけ、波は広がり、硬直化した何かがほどけていく。そこには間違いなく、ひとつの哲学、ひとつの思想が生まれるときの「振動ないし躍動」の萌芽があります。
今週はぜひとも、そんな「子ども」をみずからの精神に宿し、「子ども」になりきって過ごされることをおすすめします。
今週のキーワード
虚心坦懐