しし座
自分を表わすような言葉を
無意識との対話
今週のしし座は「露更けし星座ぎつしり死すべからず」(山口誓子)という句のごとし。あるいは、微小な人間としての自分を、どこか懐かしい記憶として語っていくような星回り。
「露(つゆ)」は秋の季語。澄み切った秋の夜空に砂を撒いたように燦然と無数の星々が煌めいているさまが目に浮かんできます。
ただ、この句の前書きに「病(やまい)やや癒ゆ」とあることを知ると、そうした景と向き合っていた際に作者の胸中に湧出した思いがどんなものであったのかまで、自然と想像が広がっていきます。
あるいは療養生活を送っていた中で、彼を圧倒し、もっともその精神の深部に働きかけてきたものが、数多の星が発する声なき声であり、自身との響きあいのなかで展開された無言のシンフォニーであったのかもしれません。
8日にさそり座で新月を迎えていく今週は、しし座にとって言ってみればおのれの無意識との対話週間なのだと言えますが、ちょうどそんな作者のように、自身の心の内から発せられてくる飾りなき声を聞き届けていきたいところです。
発語の成熟
例えば、今週は「言霊」ということについて真剣に考えてみるのもいいでしょう。奈良時代の語彙を収集した『時代別国語大辞典上代編』(三省堂)では「言霊」について、次のように記述しています。
「ことばに宿る霊。ことばに出して言ったことは、それ自身独立の存在となり、現実を左右すると考えられた。名に対する禁忌の心持とも共通する信仰・感覚である。」
普段自分が口に出して言っている言葉や、LINEでよく使っているスタンプ、インターネット上でよく検索する言葉などを改めて見直した上で、自らの存在価値をその上に置いていきたいと心から思えるような言葉を定めて、自覚的に口に出し、打ち、書いてみる。
それをここでは仮に「発語の成熟」と呼びたいと思います。
そうしたきちんと成熟した発語は、繰り返される度に人生という現実にしっかりと根を張っていき、やがて立派な大樹となってあなたを守ってくれます。
できるだけ、等身大の自分に馴染む言葉を見つけてみてください。
今週のキーワード
等身大の自分を言葉に置きかえていく