しし座
意図された酔狂
まっすぐに張られた糸(意図)
今週のしし座は、「糸電話古人の秋につながりぬ」(摂津幸彦)という句のごとし。あるいは、思いがけない方向へ、思いを拡張していくような星回り。
糸電話を耳にあてたら古人(昔の人)の秋とつながったという。秋の古人ではなく、「古人の秋」とあるように、ここでは主役は秋であり、そこに含められたニュアンスの奥行きにあります。
夏(生)の盛りを過ぎた秋は移ろいの季節であり、「糸電話」という普段使わない道具をあえて選んでいるところからしても、ここでも冬(死)を控え死につつある私たちに残された時間というニュアンスを暗に含ませているのかもしれません。
そんな時間を過ごすとき、人は過去の幻影をふっと思い出したりするものですが、作者もどこかでそんな体験をしたのでしょう。
芭蕉の『おくのほそ道』の冒頭でも、「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらえて老(おい)をむかふる物は、日々旅にして旅を栖(すみか)とす。
古人も多く旅に死せるあり」と旅へ思いを馳せるや否や、自分もまた古人に連なるように旅立っていきました。
今週のあなたもまた、移ろいと旅立ちのさなかにありつつ、自然と思いはどこか遠くの彼方へと誘い出されていきそうです。
夢に花を咲かせて
例えば、夢のように儚かった大正時代は、目覚ましく人々の暮らしが変化していく激動の時代でもありました。
まだまだ色々と制約はあれど、そんな中でも自由を謳歌し斬新な個性を追求していった人々の様式美は、古さと新しさの両方を感じさせるレトロモダンの代名詞として今なお多くの人に愛されています。
パッと咲いて散る桜が日本人の精神を象徴する花として広く愛されるようになっていったのも、ちょうどこの頃からなのだそうです。
人が夜にどんな夢を見るかはほとんどが偶然によるものですが、あなたが人生にどんな夢を託しいかなる精神性を体現していくかは、少なからず自らの意識がもたらす必然の中にあります。
他の人があなたにそうであって欲しいと望む夢より、自分がなりたい夢をきちんと開いていくこと。
旅に生き、旅に死なんとした芭蕉のように、そんなしっかりと意図された酔狂、そして自覚的な愛を、今週は募らせていくことになるでしょう。
今週のキーワード
夢に侵される