しし座
地上へのまなざし
愛おしき日常
今週のしし座は「吐く君の髪束ね待つ寒夜かな」(榮猿丸)という句のごとし。あるいは、おかしいような愛しいような日常を、どこか突き放した目線でとらえていくような星回り。
酔ってべろべろの彼女の髪が長く、結んでいないので、このまま吐いたら髪が汚れてしまう。おいおいと言いながら、手で髪を束ね持って彼女に吐かせてあげている。
道端に吹く夜風の肌寒さを感じさせる一方で、そばで吐いている彼女のあたたかみが際立ってくるようです。
ものすごく滑稽であると同時に、生々しく心温まるような不思議な一句ですが、そうした作者の独特のまなざしは今週のしし座とどこかで重なっていくように思います。
くだらないものとか、どうでもいいもの、そういう素材をちゃんと愛情と取り合わせて一緒にしていくことで、すごく切ない感情が出来上がっていくということを作者は教えてくれているのです。
果たして、あなたはそれをどこまで自分の手でできるでしょうか?
後ろの正面だーれだ?
ここでもう一度、冒頭の句に立ち戻って、考えてみましょう。
もしも自分が彼女の髪を束ね持つ男だったとしたなら、果たしてどうしたら自分たちを突き放して見ている作者のまなざしに自らの視点を重ねられるのか、と。
それにはやはり、いったん自分の足元に意識を向けてから、そっと後ろを振り返って、何かを感じとろうとしてみること。
そして、その一連のプロセスを丁寧に繰り返していくなかでこそ、自分や、自分のそばにいる人の背中をずっと見つめくれていた眼差しに気付いていくことができるのではないでしょうか。
ただし、ここでは勢いまかせの見切り発車は禁物です。
ただ目の前に方向へがむしゃらに突き進んでいくだけでは、きっと自らが進むべき方向だけでなく、愛すべき相手のことも見失い、次第に心身ともに疲弊してしまうでしょう。
今週は、自分が今まさに進もうとしている方向性を確かめる意味でも、一度立ち止まり、後ろを振り返ってみる勇気を持つことをどうか大切に。
今週のキーワード
寒空から照らす星のひかりとしての作者のまなざし