ふたご座
光の道/魔法の道
疾風怒涛
今週のふたご座は、「冬怒涛奥に光の道がある」(野崎憲子)という句のごとし。あるいは、自分だけにしかみえない魔法の道を見出していくような星回り。
冬の荒海の怒涛。白く砕け散る波のもたらす幻影だろうか。作者はそんな怒涛の奥に、光の道を見出した。そんなバカなと思うだろうが、感受性の研ぎ澄まされた人間にはありえないはずのものが見えてしまうものなのだ。
例えば、加藤楸邨は「牡丹の奥に怒涛怒涛の奥に牡丹」と詠んだ。彼は牡丹が怒涛を宿したかと思えば、怒涛が牡丹を宿していくという、めくるめく幻想の世界を垣間見た。
思えば、18世紀後半にドイツで興ったロマン主義的な文学革新運動の合言葉も、「疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)」だった。
若き日のドイツやシラーなど運動の担い手たちは、感情の自由と人間性の解放を唱えたが、それは掲句の作者が見出したような「光の道」を実際にその足で歩んでいくことにほかならないだろう。
同様に、みずからの想像力でこじ開けた一歩を踏み進めていくこと。それこそが今週のあなたのテーマと言えます。
ギーガーの場合
例えば『エイリアン』の造形をデザインしたH・R・ギーガーは、独特の世界観を有するカルトスターとなりましたが、創作の秘密について「自分の夢に出てきたものを描いている」と述べていました。
それがプロモーション用の設定であれ真実であれ、いずれにせよ彼が隠遁生活の中で次々と作品を生み出していったことは確かです。
また実際にギーガーの絵を見た人の多くは、おそらくそこに強い性衝動の抑圧を感じる事と思います。
彼は実際10代の頃に初めてキスをしたことで、しばらくのあいだ性的興奮に襲われ、頭の中をエロティシズムが占めていた時期があったと語っており、その体験が創作に与えた影響も大きかったようです。
今週のあなたは、孤独に自分と寄り添い向き合っていく時間の中で、時間をかけて研ぎ澄まされ、育まれるものの力を再認識していくことでしょう。
今週のキーワード
想像力と魔法の深い関係