ふたご座
林檎に賭ける
戯れせんとや
今週のふたご座は、『林檎投ぐ男の中の少年へ』(正木ゆう子)という句のごとし。あるいは、大人のしがらみをかいくぐって純粋な欲望を追求していこうとするような星回り。
「男の中の少年」と言っても、男がたくさんいて、その中の少年に投げたという訳ではなく、あくまで男はひとりで、そのなかの「少年性」に向かって投げたのでしょう。
そして「投ぐ」と言っても、むろん一方的にいきなり投げつけた訳ではなく、男の側がどこか子どもっぽい表情や仕草でキャッチしてくれることを想定した上で、つまり特別に親しい間柄での戯れとして「林檎」を放ったのではないでしょうか。
林檎には象徴的な意味として「若さ」や「美しさ」などがありますが、それを男の中の少年へ放るということは、男が囚われがちな出世や成功に伴うしがらみだとか陳腐なプライドだとかといった、大人のしがらみの外へと一気に連れ出さんとしているシーンなのだとも言えます。
受け取った男が林檎を食べるところまで想像してみると、さながらエデンの園の知恵の樹の実のシーンそのままという感じがしますが、だとすれば林檎を投げた女は先にその味を知っており、一方で男が女に対して取りうる最大の敬意の払い方は「ごちそうさま」とお礼をいうことになってくるのかも知れません。
10月11日にふたご座から数えて「コミットメント」を意味する8番目のやぎ座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、そうした切っても切り離せないある種の共犯関係を深めていきやすいでしょう。
賭博の感覚
俳人に限らず、芸術家のひらめきというのはどこか「賭博」に似たところがあります。つまり、今の一瞬を、過去の暗い淵へと落っことしてしまうか、明日の方へ積み上げていくかという、人生の分かれ道かというくらいギリギリのところに立っていて、それが作品の生き死にの分かれ目と直結しています。
そういう「賭博の感覚」というのを、自分の仕事であれ恋人や友人との人付き合いであれ、実際の現実に込めていける人というのは、なかなかいません。だから、もし今週あなたが、一度でもそういう瞬間に立てたのなら、自分をほめてあげてください。
あるいは、そういう勝負をこれまでも何度かしてきたのだとすれば、それなりの経験を積んできたのだと自負してください。
そうして一息つくこともたまには必要ですし、特にふたご座の人たちにとってはそうであればこそ、「軽み」や「ノリ」というものが自分を生かしてくるのだと思います。
ふたご座の今週のキーワード
関係の生き死にの分かれ目