ふたご座
ひらいてむすんで
ほどけゆくままに
今週のふたご座は、『譲る本捨つる本春遠からじ』(古田秀)という句のごとし。あるいは、自らの生という“テクスト”をほどいて、編みなおしていこうとするような星回り。
「冬来たりなば春遠からじ」という故事は、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。これは実は漢詩が出典ではなく、イギリスの詩人シェリーの詩の邦訳に由来するのだそう。
寒く、過酷なつらい時期を耐え抜けば、必ずその後にいい時期がやって来るという、ある種の予感と願望とが入り混じった気持ちがよくあらわれている言い回しですが、まだ不確かな春の到来をみずから引き寄せるかのように、無心で本の整理にいそしんでいる。
あの本はあの人に譲ろう、このへんはもうまとめて売りに出してしまおうか、とサクサク手放していく腹積もりが決まっていく一方で、これだけはまだ手元に残しておこうという思いが湧いてくる本もちらほら出てくる。
そうして改めて積み上げた本の山に分け入り、向きあっていく時間は、そのままさまざまな文脈や縁によって織りあげられた自らの生という“テクスト”をいったんほどいて、編みなおしていくプロセスでもあるように思います。
そしてここでは、本を買い込んだり、貰ったり、貯めこんだりするのではなく、人に譲ったり、捨てたりすることを通して、来るべき未来を手繰り寄せようとしている点に注目したい。
2月10日にふたご座から数えて「神殿」を意味する9番目のみずがめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、少しずつ自身がほどけてゆく感覚に身を任せてみるといいでしょう。
運命の三様態
橋龍吾という詩人が残している作品の中に、「和解」という短い詩があります。
すべてが最中(さなか)である以上は滑稽などあり得ないと、
我々は顔をくしゃくしゃにして抱き合った。
このたった2行の詩なのですが、ここにはそのむかし大工の息子イエスが、ゴルゴダの丘での死とその後の復活を経て、地球に新しい愛を伝える神の子キリストへと変容を遂げていった「幼虫→サナギ→蝶」の変容過程が、ぎゅっと凝縮して書きつけられているように感じられるます。
では、「和解」とはこの場合、何との和解を意味しているのか。それはおそらく、自らの心に巣食う心の悪(不調和)との和解であり、その一切は自己との戦いであり、償いの果てにあるひとつの終わりなのでしょう。
今週のふたご座は、そうした意味での和解に通じるような、ある種の出会いやイニシエーションを経験していくことになりそうです。
ふたご座の今週のキーワード
異なる位相を行き来する