ふたご座
地中の神秘
美しい闇
今週のふたご座は、『姫はじめ闇美しといひにけり』(矢島渚男)という句のごとし。あるいは、自身の身のあずけ先にある種の確信をもっていくような星回り。
「姫はじめ」とは、新年に男女がはじめて交合する日のこと。また、「けり」というのは過去の事柄を誰か他の人から伝え聞いたこととして述べる際に用いられる助動詞ですから、「闇が美しい」と言ったのも作者本人ではななく相手の女性だったのでしょう。
つまり、ある男性が、新年初めての交歓を思い出して、あのとき、相手が闇が美しいと言ったなあ、というのが句意。むろん、男性にとっては闇と溶け合った女性のことがことさら美しく感じられたはず。
文明社会において暗闇は少なからず負のイメージを背負いますが、ここではむしろそれが反転していて、暗ければ暗いほど2人にとってはそれがより美しく、甘美なものとして感じられるかのようでもあります。
少なくとも作者や相手にとって、闇は逃げ込む先であると同時に、共に血を流す戦いの場であり、他の何よりも生きていることを実感させてくれるこの世に存在することの立脚点であったのかも知れません。
1月11日にふたご座から数えて「共有」を意味する8番目のやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな美しい闇を誰かと共有していきたいところです。
共有と癒し
人は誰かに内的真実を語ることで初めて、自分の苦しみや悲しみに気づくことができるものですが、それは語った相手のリアクションによって強化され、結果的にそこで深く癒されていきます。
さながら植物の種が大地にまかれ、養分を吸収することで花を咲かせ実をつけていくように。そう、考えてみれば、すべての植物は闇に包まれた地中に自身の身を全力であずけることで、花を咲かし、実をつけていくことができるのです。
では、この「地中に身をあずける」ということを人に置き換えてみると、それはどんなことに当たるのか。例えば、誰かに打ち明け話することもそうですし、自分の墓碑を刻んだり、それについて想像してみるということもまた、大地に根を張るという行為に他ならず、ある種のセラピーなのではないでしょうか。
同様に、今週のふたご座もまた、これまで断片的だった思いが、語りを通して一つの感情へと練り上げられ、その共有が促されていくといった事態を経験していくことになるかも知れません。
ふたご座の今週のキーワード
闇と溶けあう感覚