ふたご座
君はふくれた餅の夢を見るか?
思い込みを開いていく
今週のふたご座は、「サボテンの花のよう」な腫れ物のごとし。あるいは、これまで意識的に避けてきたり、どこか後回しにしてきた現実に触れていくような星回り。
「心の風景」が作り出されていく過程を綴った梶井基次郎の連作短編『ある心の風景』には、夢で見た光景として次のような描写が出てきます。
変な感じで、足を見ているうちにも青く脹れてゆく。痛くもなんともなかった。腫物は紅い、サボテンの花のようである。
通常、皮膚の一部が化膿して腫れたものを「腫れ物」と言い、すこし触れただけでもどうにかなってしまいそうなので、そうっと触るか、おそるおそる扱わざるを得ない状況をくさして「腫れ物に触る」という言い方をする訳で、それは単に身体的レベルの話に限らず人間関係や自身の抱えている隠れた問題に対しても適用されます。
ただ、この場合はどうも様子が違っていて、「サボテンの花のよう」な腫れ物はむしろ触ってくれと言わんばかりで、ご丁寧に「痛くもなんともない」という断りまでついている。
厄介なこと、これからのリスクや、良くない可能性。もしかしたら、そうした”腫れ物”に手を出していくことは、可能性を失っていくことではなくて、想像していたのとは別の可能性に開かれることなのかも知れない。
そんなほのかな予感のようなものがここにはあり、それはそのまま今週のふたご座が置かれた状況にも通底していくはず。1月4日にふたご座から数えて「自己劇化」を意味する5番目のてんびん座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分から率先して“腫れ物”にさわってみるといいでしょう。
餅は膨れて餅となる
腫れ物に手を出すとは、言い換えれば、「ついにこれまで越えなかった一線を越えていく」ということでもありますが、あえて日常的な光景から考えてみたいと思います。
例えば、正月などに網に餅をいくつか並べて焼いていると、それらが決して同じようには膨れないことが改めてよく分かってきます。横へずれるものもあれば、真上にきれいに膨れ上がっていくものもあり、また中にはついにまったくの不発の終わるものもある。まるでどこかの誰かのようですが、さて、では今のあなたはそのうちのどれに当たるのでしょうか?
それを見極めるには、まずある程度じっと我慢して経過を待つ必要があります。逆に言えば、途中で怖くなってしまって餅をひっくり返したり、面倒になってさっさと皿に移してしまっては、見極められるものも見極められない。このことを、今週のあなたはよく肝に銘じておく必要があります。
「自分は自分、人は人」と割り切って生きていくためには、そうした怖さや面倒さをどこかで引き受けていかねばなりません。今週のふたご座は、一度越えてしまえば後戻りできない一線を悠然と越えていくぐらいの気概が欲しいところです。
ふたご座の今週のキーワード
膨れて破れた餅でなければ餅でない