ふたご座
互いを取り込みあう渦の中へ
触覚とともに
今週のふたご座は、『くちびるに湯豆腐触れぬ吹きをれば』(榮猿丸)という句のごとし。あるいは、意識的防衛をすり抜けて、脳が直接的に想起させられていくような星回り。
ふーっ、ふーっと息をかけて冷まそうとしたら、触っちゃって「あちち」となったという日常詠。ただそれだけのことではあるのですが、掲句にはどこか起こった事実だけでは終わらない雰囲気があります。
レンゲにのった湯豆腐と、口を尖らせた際のくちびる。2つのまったく異なるもの同士が触れ合うことで生まれるさりげなく、柔らかなドラマは、読者にかつて自身が体験したあたたかな接触の記憶を思い出させてくれるはず。
例えば、寝れずにぐずっていた幼児の頃におぶられた親の広く大きな背中の感触だとか、初めて意識している意中の相手と手を繋いだときの感触や、中には飲み過ぎた寒い夜に友達のゲロを両手で受けとめた感触もあるかも知れない。
いずれにせよ、見るだけ聞くだけ話をするだけでは決して得られない他者のリアルな手応えが触覚には込められており、それはもう一度生きなおされた時、力強いよろこびを伴うのです。
12月13日にふたご座から数えて「他者との関わり」を意味する7番目のいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、リアルな手応えの喜びを求めていくことになるでしょう。
「交雑」から生まれた私たち
交雑とは人間と動物の血が混じるという意味もありますが、神話世界などで交雑から生まれた多くの存在は、文字通りの「怪物」でありました。
例えばギリシャ神話では、ケンタウロスには馬の血が、キマイラやゴルゴンには蛇の血が、ミノタウロスには牛の血が入っており、いずれも常人では決して持ち得ない異常な能力を有し、社会規範から大きく外れた振る舞いをするのが特徴でした。
しかしそうであるからこそ、彼らの野蛮、狂気、乱脈こそが逆説的に英雄を作り出し、偉大な王を輩出する母胎ともなっていたのも事実でしょう。その典型と言えるのが、日本神話の女神で神武天皇の祖母であり、叔母でもあったトヨタマヒメであり、その真の姿は八尋の大鰐(やひろのおおわに)という海の怪物だったと伝えられています。
これは異類婚姻譚(いるいこんたん)の典型として取り上げられることも多く、これは自分たちが正統とするのとは違った異類を排斥するのではなく、むしろ取り込み、婚姻を交わしていくことで何事か幸を得るという感覚が古来あったことの証しとも言えるでしょう。
今週のふたご座もまた、肌になじまない現実を避けるのではなく、むしろ積極的に交わり取り込んでいくことで、それを克服していくことがテーマとなっていきそうです。
ふたご座の今週のキーワード
異類と交わる