ふたご座
いっそひらりと宙返り
神秘と冗談
今週のふたご座は、『冬空や猫塀づたひどこへもゆける』(波多野爽波)という句のごとし。あるいは、感覚が研ぎ澄まされた軽業師のように自由自在になっていくような星回り。
塀の上にいる猫である。地上で体をぐいーっと伸ばしたかと思うと、ひらりと塀にのぼって、物音一つ立てずにすーっと歩いていく猫の軟柔な身のこなしは、まるで軽業師のようであり、目を離したすきに忽然と塀から姿を消してしまう。そして、塀の上には低く垂れこめた雲でいっぱいの冬空がどこまでも無限に広がっているのだ。
この句に、どこか猫のもっている妖変性が感じられるとすれば、それはどこへも行ける猫の自由自在さがそんな冬空に自然と溶け込んでしまっているからで、猫が視界から消えてしまった後の、塀の上の空はそのどこかに猫をそっと隠しているかのようでもある。
忽然と煙のように消えてしまうその感じは、手品のようでもあり、悪い冗談のようでもある。いわば、神秘と冗談とが半ば溶け合いながらそこに置かれているのだと言えます。
この句はその意味内容について深く考え込むようなものではないし、その意味でごく軽い句ではあるけれど、だからこそ言葉を使う人間側の不自由さを限りなく透明化することに成功しているのではないでしょうか。
11月27日に自分自身の星座であるふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな神秘と冗談をみずから体現していくことになるかも知れません。
夢を仕込むということ
猫は一日の大半を寝て過ごしますが、あれも考えてみたら彼らが自由に生きていく上での美学なのでしょう。
人間もまた、夢の中では覚醒時の数倍の長さの体験を持つことができると聞きますが、これはどこか竜宮城で乙姫らと楽しい一時を過ごした浦島太郎のお話とも通じるところがあります。
夢の中は治外法権であり、この世とは別の時間が流れていて、それゆえにさまざまな楽しみで彩られている。これがもし、現実と直結していて、すべての夢がやがて実現していき、現実の出来事と同じように扱われるようになったら、どうなるか。おそらく、夜寝てからの、あのだらしなく、ふしだらな愉しみがなくなってしまうショックで、白髪になってしまうはず。
今週のふたご座もまた、ついつい生き急いでしまいがちな生活のリズムに余裕をつくって、スケジュールの中に何もしない空白時間を設けてみたり、お香やろうそくの明かりなど、睡眠の質を高めるための一手間をかけてみるといいでしょう。
ふたご座の今週のキーワード
治外法権を設けること