ふたご座
ズバリよう分からん
微妙で複雑な、名状しがたい倒錯的な関係
今週のふたご座は、「妖しい間合い」へと踏み出していくよう。あるいは、どこか見知らぬ領域へと釣りあげられていくような星回り。
古井由吉の『槿』は、40歳過ぎのもう若くはないが老いてもいない独身男性の杉尾が主人公の小説で、ひょんなことから“誘いかつ拒む身体”をもつ女性と向かい合うことになり、自分でもどうしたらいいのか分からなくなってしまうという場面が繰り返し登場してきます。例えば、献血所の寝台で隣り合わせたところから縁が生じた31歳の女性のアパートでの場面。
「一度きり、知らない人に、自分の部屋で、抱かれなくてはいけない、避けられないと思ったんです」
言葉とはうらはらに、男の沈黙に押されて、やめて、と哀願する光が目に差した。杉尾は顔をわずかに横へ振った。
相手の女性はここで禁じつつ誘い、誘いながらも固く拒んでおり、その両義的な姿勢のただ中で、甘い花粉を散らす花となって静止しているようでもあります。当然、主人公の方も困惑のなかで「きわどい釣合い」によって宙を吊られ、「張りつめた静かさ」のなかで苦痛なのか快楽なのか分からないものが熾(おこ)り立っていく。
ここには、恋愛だの情事だのといった手垢のついた言葉では形容することのできないような微妙で複雑な、名状しがたい倒錯的な関係があり、主人公は何度かそうした関わりを経ていく中で、いつの間にそれまでの安定した秩序からはみ出していることに気が付くのです。
11月24日にふたご座から数えて「他者との接触」を意味する番目のいて座へと「勇み足」を促す火星が移動していく今週のあなたもまた、そうした人と人の間の、また運命と運命のあいだの、絶えず伸び縮みするような妖しい間合いのただ中で、立ち尽くしていくことになるかも知れません。
弱い関わり
これはさまざまな異なる言い方で言われることですが、人や出来事との出会いには動脈に乗ってくる出会いと静脈に乗ってくる出会い、あるいは強い出会いと弱い出会いの2つがあります。
前者は、周囲の見つけやすいところにいる相手に、自分から衝動的にぶつかっていくことで作り出されるものだったり、相手の好意や意図が分かりやすい関係性のこと。
そして後者は、間接的なつながりの先にいる相手と、流れゆく時間の中で互いの様子を見計らいつつ出会う機会を作っていくことで得られるものであり、相手が何を考えているのか、いまいち分からないような関係性のこと。
今週のふたご座は、特に後者の弱い関わりの大切さこそ、改めて実感していくべきタイミングなのだと言えるのではないでしょうか。分かりにくさや微弱さの先にある深みや豊かさに目を向けて、丁寧に、しかし時には大胆に自らを差し出していくべし。
ふたご座の今週のキーワード
さりげなく、ぬかりなく