ふたご座
もらったものをお返ししていくために
二分法を超えて
今週のふたご座は、職業としての「食客」のごとし。あるいは、どこの誰のところで「食客」していくべきか改めて見極めていこうとするような星回り。
自然界の食物連鎖のように、人間社会というのも巧妙にであれ、漠然とであれ、「いかに他者に寄生するか」ないし「他者を捕食するか」といった思惑同士がいたるところでぶつかり合うことで成り立っているところがあるのではないでしょうか。そして、そうした寄生関係や共喰い関係を象徴する存在として「食客」があげられます。
歴史を振り返ってみると、食客は身内か他人、友か敵かといった分かりやすい二分法にはうまくおさまらない特殊な在り方をしているのですが、ミシェル・セールはそれは単に主人に食事や宿を提供してもらっているだけのお気楽で生ぬるいものではなく、れっきとした職業なのだとして、次のように述べています。
食客は招待主の食卓に招かれる。食客はその返礼に、自分の語りと笑いとで会食者を楽しませねばならない。食客は、きわめて正確なしかたで、美味なる料理と甘美な言葉を交換する。言語の貨幣で食費を払い、それを購う。それは世界最古の職業である。(『パラジット―寄食者の論理』)
3月21日に春分、そして22日にふたご座から数えて「世渡り」を意味する11番目の星座であるおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が追求していきたい語りや笑いの内容や方向性から今後渡っていくべき世を逆算してみるといいでしょう。
贈与と負債の網目の中で
経済がグローバル化し、世界が単一の文化に覆い尽くされた「モノカルチャー」へまっしぐらになってしまった現代社会では、すべてを「交換」して生きていくことが可能とされ、経済的合理性や「コスパ」が推奨されて、それ以外のものを忘れさせられていきます。では、何を忘れさせられていくのか。
それはおそらく、自分がすでに何か大事なものを誰か何かから「贈与されている」という感覚や記憶でしょう。食料であれ、棲み処であれ、安心や自由や精神的成長であれ、それらは基本的に宇宙や地球からの絶対的贈与を受けることで成り立っているはずですが、本来なら贈与であるべきものが「想定外」とか単に「ネ申」の一言で片づけられて、「もらった」という記憶がきれいさっぱり削除されてしまったりする。
その結果として、根本的に自分たちが脆弱な存在で、たくさんの「贈与」を「負債」として抱えることでやっと成り立っているのだという認識や、「おかげさま」という感覚さえも忘れ去られていっているのではないでしょうか。その意味で今週のふたご座もまた、既に自分の一部であるところのものを改めて外部に発見していくプロセスとしての「世渡り」というところに、やはり繋がっていくのだと思います。
ふたご座の今週のキーワード
どこか遠くに感じていたものを近くに引き寄せる