ふたご座
コンステレーション・ララバイ
これしかない!
今週のふたご座は、『春の暮老人と逢ふそれが父』(能村研三)という句のごとし。あるいは、これしかないと思えるような他者との間合いをひそかに探っていこうとするような星回り。
もし「冬の暮」や「秋の暮」だったなら、父親の老いの寂しさは残酷なほどに強調されすぎていたはず。それが、過ごしやすくどこか夢見心地な雰囲気の漂う「春の暮」に設定されたことで、老いた父親の姿さえもどこか愛らしいものへと転じています。
つまり、掲句におけるすれ違うまで顔の判別がつかない薄暗がりは、「春の暮」でなければならなかったし、そうして発見されたのも同じ俳人であり、偉大な先達でもあった「父・能村登四郎」でなければならなかったのです。
その意味で、作者はここしかないというタイミングで、この人しかいないという相手を迎えに行ったのだとも言えるでしょう。しかし、それを大げさに、勢い込んでやっているのではなく、さりげなく、やわらかに忍び寄っていくからこそ、掲句なような句も生まれたように思います。
同様に、15日にふたご座から数えて「パートナーシップ」を意味する7番目のいて座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そうして対象やアプローチを限定していく方向に動いていくことになるでしょう。
縫い糸のごとき縁を
春になると夜空の星たちも、ひっそりと声をひそめて押し黙っているのが我慢ならなくなって、「ウワッ!」とか「ふわーあ」とか、不用意な声がどこからともなく漏れ出してくるくらいがちょうどいいような気がしてきます。
おそらく、かつてそんな風に声をあげた星々に偶然居合わせた人たちが、いっしょに声をあげたのは、この星とこの星と、このへんに違いないと信じて「星座」というつながりを作ってしまったのではないでしょうか。
事ほど左様に、この世界にも星の数ほどたくさん人がいるのに、やはりてんでばらばらのまま、シーンと押し黙って居られるはずがないのです。今週のふたご座もまた、自分や誰かをつなげ、結んでいくような縫い糸のごとき縁の流れを、自然と耳でとらえ、目で追い、確かめていくことになっていくはず。
ふたご座の今週のキーワード
星々の背景にある寂しさや孤独をじっと見つめること