
ふたご座
余生を始める

現実はいつも未知の相貌をまとっている
今週のふたご座は、『厳冬やアボガドの種堅牢に』(矢島渚男)という句のごとし。あるいは、今はまだ眼前に現れていない“非現実”としての未来を追いかけていくような星回り。
「ウクライナ前後」と題された50句のうちの一句。厳しい冬の寒さに、本当に硬いアボガドの種。そして「堅牢」という、やはり硬質な響きの漢語的表現を織り交ぜることで、意味の上でも音の響きの上でも、今の世の中に蔓延している閉塞感を象徴的に詠んでいるのでしょう。
一方で、大きくて硬いアボガドの種は、やがて順調に発芽していけばおのずと割れていくものであり、厳しい冬もいつかは終わって春が訪れる。であれば、それ以外の現実などありえないのだと言わんばかりの現在の「人類間の終わりなき戦乱状態」や「資本主義リアリズム」、「地球を喰い尽くす人間中心主義」もまた、いつかは終わりを迎える日がくるはず。いや、すでにその兆しはそこかしこに露呈しつつあるように思います。
それこそ、私たちの視界のはしで、鼓膜のうえで、鼻さきで、舌のうえや指さきで、道しるべもないけもの道の先へと導いてくれる月明かりのように、そっと垣間見なくては決して捉えられないような未踏の領域として、はたまた、多くの人の思考や仮作の過程の行き着く先にあるひとつの巨大な謎として、私たちの想像が及んでくるのをジッと待ち受けているのではないでしょうか。
29日にふたご座から数えて「謎」を意味する9番目のみずがめ座の半ばに太陽が達して立春を迎えていく今週のあなたもまた、そんな現実と想像の追いかけっこを少しでもはやく終わらせるべく、感覚を駆使して与えられた現実以外の現実を発明/捏造していくべし。
リストの更新
人間はどうしたって過つものだし、どうしたって未練を持ってしまう。ただそうした過ちや未練にいつまでも囚われ、自分を嫌い続けることもまた難しいはず。
どうしたって自分のことを嫌いになれないからこそ、人は自分と仲直りするために生き続け、そうして人生という旅の果てまで行って、やっと自分を受け入れられるようになっていくのかも知れません。そういう旅には必ずしも目的地は必要ありませんが、逆に道しるべとなるものはその都度必要になってくるでしょう。
例えば、「死ぬまでにやりたいことのリスト」というのも、結局ひとつひとつの内容で、どれだけ達成できたかが重要なのではなくて、中継地点を結んでいくうちに自分自身との仲直りのイメージが浮かんでくることが大切なのではないでしょうか。
今週のふたご座はそうしたイメージととともに、改めて死ぬまでにやりたいことのリストのアップデートを試みていきたいところです。
ふたご座の今週のキーワード
自分との仲直り期間としての余生





