ふたご座
記憶の光景ふたたび
縄跳びする子供と古ぼけた馬車
今週のふたご座は、『縄とびの寒暮いたみし馬車通る』(佐藤鬼房)という句のごとし。あるいは、時空をこえて今と昔とが交錯していくような星回り。
「寒暮(かんぼ)」は冬の夕暮れの意。どことなくキリコの平凡な日常生活と並列する神秘的で静寂な世界を描いた絵画を思わせる一句。
肌寒い時期の縄とびは足やからだにぶつかると鈍い音とともに、とりわけ鋭い痛みをもたらしますが、作者がここで感じているのは少年時代に体にしみ込んだ痛みなのではないでしょうか。
そこにさらに、早い時間から灯りがともる「寒暮」の道に、軋んだ音を立てながら古ぼけた馬車が通りすぎていく。おそらく「いたみし」はそうしたリアルタイムの情景にもかかっているのでしょう。
馬車の荷台に見えたのは、身売りの犠牲になった娘たちか、それとも人間に食べられるために相も変わらず殺され続けている獣たちだろうか。いずれにせよ、作者の胸の内にあったのは秘めた「悼み」であったように思います。
12月8日に自分自身の星座であるふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、寒気を通して滲み出てくる人間らしい情感に不意につかれていくこともあるかも知れません。
遠い過去とそう遠くない将来を結ぶこと
もう少し簡潔な言い方をするならば、今週は「自分という個人がいかに優れているか」ということよりも、もっと価値があること、大切なことに気が付いたり、思い出していくことがテーマになっているのだと言えます。
それはあなたが社会のノイズにまみれる以前に、漠然と抱いていた思いや欲求でもあったり、何か誰かから受け取ったものであるかも知れません。いずれにせよ、今週のふたご座はなにか具体的な成果を画策したりといったことより、これまであまり自分と関連付けてこなかった日常の些細なディテール―例えば、身体の古層にしみ込んでいた記憶に対して、何らかの「繋がり」を感じ、自分なりの手応えや確信を強めていくことが肝要です。
シュタイナー教育で知られるシュタイナーの言葉に、「自分自身を知りたければ世界を観察しなさい、世界を知りたければ自分自身を観察しなさい」というものがありますが、まさにその前者に取り組んでいきやすいタイミングなのだとも言えます。
もし難しさを感じたときは、空間的にも、時間的にもスケールを拡大してみるといいでしょう。かえってその方が自分に対してより深く愛着を覚えられるはず。
ふたご座の今週のキーワード
ランドスケープの変化変遷