ふたご座
過ちこそ人間の証し
「たまたま」を取り戻せ!
今週のふたご座は、神聖なる「過ち」の降臨。あるいは、もっと人間らしく生きていくために、思いきり間違えていこうとするような星回り。
かつてアリストテレスは偶然を本質的ではないものとして考察の対象から外しましたが、それは近代化の波のなかで確率の理論などが洗練され、偶然をめぐる合理的な理解が進むと、より広く一般的な見解へといっそう反映されるようになっていきました。
つまり、物事の偶然性ということを、さまざまな科学的法則の不十分さからくる見かけ上のものと考えるようになり、そこにもはやある種の“神聖さ”を見出さなくなっていった訳です。ただ、そんな中でも人間の「過ち」に関しては、注意力の欠如に由来する単なる「ミス」と片付けられる一方で、悲劇的な運命へと引き寄せられる人間の潜在的な性質の産物と見なす見方も依然として残ってきたように思います。
つまり、理性的な人間であれば当然するだろう合理的な判断や効率的な行動を、人間はつねに選択するとは限らない。それどころか、非合理的な判断やとんでもなく無駄な行動をそうと知りつつもあえて取ろうとすることさえあるのだと。
さらに言えば、「自然をコントロールしてこそ人間であり、しあわせになれる」といった近代的な価値基準が揺らぎ続けている昨今においては、むしろその人がどんな「過ち」を犯してきたか、いかなる「偶然」に左右されてきたかということこそ、人間らしく生きていくための鍵となっているのではないでしょうか。
10月3日にふたご座から数えて「怖いもの」を意味する8番目のやぎ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、単なる「ミス」としての過ちではなく、より神聖な「偶然」としての過ちを敢行していくべし。
「生産性」へのラディカルな抵抗
生まれてきた以上は世の中に必要とされている人間だ
今、いのちがある限り、君には必ず使命がある
使命を見出すためにも、自分の人生を力強く歩んでいかないといけない
これは現代社会では見慣れ切ったメッセージであり、「使命」などと大仰な言葉が使われているのも、要は「責務」という言葉の言い換えでしょう。すなわち「生産性のない人間には生きる価値はない」というどこかの誰かの発言の裏返しでもあり、なんだかんだと言えど、今日の日本社会で広く受け入れられている生産性信仰に基づくじつにありふれた思想の表明と言えます。
ああ、素晴らしきかな‟不断の努力”とそれを疑うことなく価値づける労働倫理!「ミス」をするほどに商品価値を落とされていく人間の形をしたロボットよ!
しかし、ほんらい生はどこまでも無根拠であり、無底。つまり、あらゆる意味付けや解釈を無効化し、価値という尺度を拒絶する地獄の底の奇蹟であり、どんな負債からも自由で、‟語りえない”何かであって、それを垣間見ることこそが「偶然」の神聖さであったはず。
その意味で今週のふたご座もまた、自分が投げ込まれ硬直しつつある既存の文脈からズレ落ち、脱臼していくためのきっかけをつかんでいくことがテーマとなっていくでしょう。
ふたご座の今週のキーワード
ときどきは思いきり間違えよう