ふたご座
自然にならう
乱数的な自然のふるまい
今週のふたご座は、「若草にきれいに坐るつまらなし」(髙柳克弘)という句のごとし。あるいは、できるだけ美しいと感じられるふるまいに近づいていこうとするような星回り。
20世紀の物理学は、生命というものがそれまで考えられていたほど数学的でも予測可能なものでもないのだということを、電子のふるまいを研究していく中で発見してきました。
それは例えば1本1本が乱数的に並んでいる掲句の「若草」のように、実際に目にするとなんだか美しく感じられてくる。これが、ペタンと規則的に並んでいたなら、かえってなんだか不自然に感じられるはず。そしてそれがおそらく、「若草にきれいに坐る」ことのつまらなさの根底にある感覚なのではないでしょうか。
逆に言えば、崩して坐る。すなわち、定量化できない絶妙な“間(ま)”であったり、ひび割れや欠けなどの不完全さや未完成さの中にある、理屈からはずれた美しさをみずからの中に見出していくことこそが、「若草」のなかに同じ自然な生命の1つとして坐していくことのおもしろさなのだということでもあります。
18日にふたご座から数えて「同類への同化」を意味する4番目のおとめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、そうした乱数的な自然のふるまいに自分のふるまいの足並みをそろえていくことがテーマとなっていくでしょう。
自分なりの「若草」
たとえば、先日テレビに横浜の赤レンガ倉庫を白く塗ったキャンバスを彫刻刀で削って模写している男性が映っていました。
彼はすべてのレンガをできるだけ正確に模写しつつ、それをアレンジして自分の作品にしているのだそうですが、ひと目見て膨大な時間をかけていることが分かります。
なぜそこまでして細かく描き込むのかという質問に、その男性は、43番目の草が生えたレンガや、60個目の欠けたレンガなど、小さな傷まで描き込んでいかないと、自分が愛する赤レンガのよさがキャンバスで表現できないのだとか。
これもまさに、若草に崩して坐る、ということの好例のひとつと言えますが、そこには小さな傷や欠損も見逃さずによく観察し、受け入れ、美しいと感じるような、いわゆる「わび・さびの美学」が根底に流れており、そうなると「若草」は何も大自然のなかだけでなく、先の男性にとっての赤レンガ倉庫のように、日常生活のどんなところにも潜んでいる訳です。
その意味で今週のふたご座もまた、むしろこれまで気にも留めていなかったような身近な場所にこそ自分なりの「若草」を見出していくべし。
ふたご座の今週のキーワード
乱数的な存在こそおもしろい