ふたご座
私信をきわめる
こちらは7月19日週の占いです。7月26日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
ボルヘスとマッケンの系譜
今週のふたご座は、「マイナー詩人」という言葉のよう。あるいは、大衆的人気や分かりやすい成功とは別角度の方向に自身の歩みを繰り出していくような星回り。
20世紀を代表する大作家ボルヘスが編んだ世界文学アンソロジー集『バベルの図書館』の、イギリスの小説家アーサー・マッケンについて書かれた文章に次のような箇所があります。
歴史の長い、汲めども尽きぬイギリス文学において、アーサー・マッケンはひとりのマイナー詩人である。急いで指摘しておくと、「マイナー」「詩人」なる二語をたてまつったからといって、けっして彼を軽視しようとするものではない。私は今彼を詩人と呼んだが、そのわけは、苦心の散文で書かれた彼の作品は、詩作品のみがもつあの緊張と孤独を湛えているからである。また、マイナーと呼んだわけは、マイナーな詩とは種々のジャンルの一つであって、決して下位のジャンルというものではないと考えるからである。それが表現している音域はあまり広くはないが、その口調はつねにより親密なものだ。
この記述に従えば、他ならぬボルヘス自身もまたマイナー詩人と言っていいかも知れない。先に大作家と書いたものの、彼がノーベル賞をもらえなかったのは、短編小説というマイナーなジャンルにしか手を染めなかったことも大きかったであろうし、また夢、分身、虎、ナイフ、迷宮などの、ごく限られたテーマを一生涯倦むことなく繰り返し取り上げ続けたその「表現している音域」もまたけっして広いとは言えないものでした。
24日にふたご座から数えて「探究」を意味する9番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、鋭く狭く深くなにかを突いていくべし。
前世からの手紙
孤独と緊張で思い出されるのは、まだ少年面影の残るダライ・ラマ14世が「私はどうしたらいいのか?」と側近に聞いた際、次のような手紙を渡されるというシーンです。
チベットは、宗教、政府の両方が内外から攻撃を受けるであろう。もしわれわれみずから自国を守らないなら、ダライとパンチェン・ラマ、父と子、すべての尊敬すべき宗教指導者達はこの国から姿を消し、無名のものとなってしまうであろう。僧も僧院も絶滅されるだろう。法の支配は弱まり、政府官僚の土地、財産は没収されるだろう。彼らは己の敵に奉仕させられ、物ごいのように国を彷徨うことになろう。すべてのものが塗炭の苦しみに喘ぎ、恐怖にさらされ、昼も夜も苦悩に重い足を曳きずってゆくだろう。(『ダライ・ラマ自伝』)
そして「この手紙を書いたのはあなたですよ。あなたが私達を導くのです」と言われ、呆然としてしまうのです。しかし結果的に少年は前世からの言葉を受け入れ、救国の英雄となっていきました。
個人というものを支える、本人の才能や努力以外の訳の分からない力のようなものがあるとすれば、それはこうした普段気付きえない自身の背景との結びつきであり、連綿と続いてきた系譜を背負うという機会をどれだけ経てきたかにあるのではないでしょうか。
今週のふたご座は、そんな自身の背景だったり、‟図”に対する‟地”の部分に焦点が当たっていきそうです。
ふたご座の今週のキーワード
必要な言葉は何度でも自分に与えられる