ふたご座
蜥蜴か、人間か
影遊び
今週のふたご座は、「青蜥蜴岩盤すべるひゝきあり」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、一度はすっかり死滅したと思っていた何かが蠢きはじめていくような星回り。
日本語では動物をまずカタカナで表記する慣習がありますが、掲句がもし「青トカゲ」だったらここで取りあげることはなかったでしょう。
「トカゲ」は青かろうが黒かろうがあくまで身近でありふれた爬虫類ですが、これが「蜥蜴」となったとたん、一挙に面妖な雰囲気をまとってこちらを別の世界に紛れ込んだかのように錯覚させるのです。
「青蜥蜴」は、尾が青緑色をしている蜥蜴の子ですが、そういう訳でここでは志村どうぶつ園に出てくるような愛すべき動物たちのお仲間としてではなく、ぱっくりと口を開けた不気味な深淵ととともに、今でも依然として地下深いところに生き続け、のたうっている怪物として登場しています。
そして、地の底から岩盤をつたって、いつの間にかすべり上がってきては、ヒタヒタヒタヒタと人間世界に暗い否定の影を投げかけてくるのです。
20日にふたご座から数えて「ハイド&シーク」を意味する3番目のしし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、すっかり地表(日常)から姿を消したと思っていた影(一切の矛盾と一切の醜悪)を再び見出していくことでしょう。
ある脱獄犯の独白
だいたい藪蛇をつついて、ある日突然刑務所にぶちこまれたとしても、特段たまげるようなことでもないのかも知れない。
だって、どこに行ったって職にありつけなきゃ生きていけないってことからして、作業場つきの刑務所みたいなものじゃないか。だいたいこの世ってところが、そもそも大きな刑務所みたいに作られてるって可能性の方がよっぽど現実味がある。
例えば、ときどき昨日まで自分のすぐ横で作業していた誰かが、突然いなくなっていたりする。そんな時に「お星さまになったのよ」なんて、誰かに言われた言葉を馬鹿正直に信じている奴がいたら、いい笑いもんだよ。刑務所ってところは満天の墓場かって話だ。息苦しいったらありゃしない。
このまま黙っているくらいなら、自分の勘に従って行動するまでだ。たとえ恥ずかしい行為と思われても、それが刑務所内での話なら、むしろ美しい行為のはずだ。止めても無駄だ。それが今のあなたなのだから。
今週のキーワード
ひょっこり