ふたご座
文明とは逆の側に立ってみること
大蛇のごとく身を曝せ
今週のふたご座は、スサノオに退治された八岐大蛇(ヤマタノオロチ)のごとし。あるいは、自分を超える存在の一部となっていこうとするような星回り。
太陽女神(アマテラス)の弟であるスサノオは大変な乱暴者であったため、死者の領域である根の国に追放されるのですが、その途中、出雲の川の近くを通りかかった際、その土地の首長夫妻が悲しんでいるのに出会います。わけを聞くと、土地に住む大蛇が毎年いけにえを要求し、今年は自分たちの娘がこの忌まわしい犠牲者に選ばれてしまったというのです。
スサノオは一計を案じて、大蛇にしこたま酒を飲ませて酔わせたところに斬りかかり、激しい戦いの末にこれを倒します。倒された大蛇の体内からは、見たこともない剣があらわれ、剣と首長の娘を手に入れたスサノオは、出雲に住まいを定めて王となるのです。
この日本神話では、土地の首長が恐れる大蛇は自然の奥に隠された力を象徴しており、人間を脅かし食べてしまう「人食い」なのですが、乱暴者であったスサノオはそんな人食いと親和性があったため、面と向かって戦うことができたのです。そして、大蛇の体内からあらわれた「剣」はそんな自然の力そのものであり、それがスサノオの手にわたることで、単なる首長をこえた王権が誕生したのです。
古代人の思考においては、食べることと性行為は同じであり、食べられることで相手の一部となっていったのです。
12日にふたご座から数えて「自己喪失」を意味する12番目のおうし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、どうしたら自分という存在を適切に循環させていくことができるのかということがテーマとなっていくでしょう。
闇と戯れる
岡崎京子の漫画『Blue Blue Blue』に、「匂いはいつもあやうい。ことばではない何か。何かが反応してしまう。匂い。夏の。夜の。アスファルトの。あなたの。匂い。」というセリフが出てきますが、これがもし明るい蛍光灯の下で吐かれたセリフだったなら、さぞかし拍子抜けしていただろうと思います。
まとっている闇が深ければ深いほど、その中で立ちのぼってくる感覚や印象は鮮烈になっていくもの。そういうことを、かつての日本人は当たり前に体感していましたし、上手に楽しんでもいました。
例えば集まって月の出を待つ「月待」や、怪談を語りあう「百物語」、野山に繰り出す蛍狩りや虫聴きなど、さまざまな機会を持っていたのです。
つまり、ふつうの日にはわが家の闇に身を浸して眠りにつき、新月のような特別な夜にはいろんな闇へと繰り出しては闇に親しみ、闇に遊んで、けっこう夜更かしや徹夜をしていたのです。そこにはもちろん光もありましたが、あくまでそれを包む圧倒的な闇への感覚をむしろ際立たせるためのささやかな‟呼び水”だったのです。
今週のふたご座もまた、いろんな意味で理性の「灯り」をOFFにしていくことを心がけていくといいでしょう。
今週のキーワード
開かずの間に忍び込む遊びのごとく