ふたご座
学問のすすめ
熊楠のマンダラ体験
今週のふたご座は、南方熊楠における「縁の論理」のよう。あるいは、知ること考えることの本質について思い巡らせていくような星回り。
民俗学者の南方熊楠(みなかたくまぐす)は自身の構想した宇宙-生命モデルとしての「南方マンダラ」について、師であり親友でもあった土宜法龍(どきほうりゅう)に宛てた手紙の中で次のように書いていました。
今日の科学、因果が分かるが(もしくは分かるべき見込みあるが)、縁が分からぬ。この縁を研究するのがわれわれの任なり。しかして、縁は因果と因果の錯綜して生ずるものなれば、諸因果総体の一層上の因果を求むるがわれわれの任なり。
熊楠は宇宙そのものである彼の「マンダラ」を、まず「諸不思議」の集合としてとらえ、次にそれにマンダラ構造を与え、最後に「縁の論理」によって動きと変化を生みだすことで、そこに生きた生命体としての宇宙を見出そうとした訳です。
何となれば、大日に帰して、無尽無究の大宇宙の大宇宙のまだ大宇宙を包蔵する大宇宙、たとえば顕微鏡一台買うてだに一生見て楽しむところ尽きず、そのごとく楽しむところ尽きざればなり。
そう、熊楠にとって学問とはこの宇宙の無尽無究、すなわち「大日如来(すべての命あるものの根源)」というマンダラが変化し、運動しながら、つぎつぎと新しい自分の姿を人間の知性の前に示して見せる万華鏡体験のごときものだったのでしょう。
6日にふたご座から数えて「驚きと喜び」を意味する5番目のてんびん座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、ほんとうに自分を、そして人間を豊かにするような学びや楽しみということに立ち返ってみるといいかも知れません。
ユングのマンダラ体験
現代におけるマンダラ論を語る上で無視できないのがスイスの精神医学者・ユングの存在であり、彼もまた2つの方向からマンダラについての関心を抱いていました。
1つは幼少期からしばしば不気味な夢やビジョンを見ていた彼自身の個人的体験に由来するものであり、もう1つは治療の過程で患者が自分自身に対する根本的な見当付けができない状態にあるとき、マンダラらしきシンボルを描き出す傾向にあると気付いたことによるものです。
それも病状が悪化する時期ではなく、回復に向かっていく時期において、「私は誰?なぜここにいるの?ここはどこ?今はいったいいつなのか?」といった問いに対し、患者が無意識のうちに鮮烈なマンダラのイメージを頻繁に思い浮かべてきたのです。
ユングはそこで、マンダラは心の統合と全体性の原型であり、現実の世界と和解していくためのきわめて有効な方便として機能しているのだとそこで結論づけましたが、それは程度の差こそあれ、まさに今のあなたにも必要なものと言えるのではないでしょうか。
今週のキーワード
縁の研究