ふたご座
本能の洗濯
頭から食べたい
今週のふたご座は、芥川龍之介の恋文のごとし。すなわち、からだが欲するものを食べるがごとく誰か何かを強く必要とするような星回り。
あのいかにも気難しそうな顔の芥川龍之介も、25歳頃の恋文のなかで「ボクは文ちゃんがお菓子なら頭から食べてしまひたい位可愛いい」なんて書いているのだから、人間分からないものです。
そう、本当に食べてみないと分からない。芥川の恋文を読んでいると、まるで子供が書いたような文章という印象を受けますが、考えてみれば子供にとっての快楽は食べることに他ならず、芥川もどこかでそうした「食べること」と「他者と繋がること」の深い関連に気付いていたのでしょう。
「食べること」が恋情と結びつけられる表現は、神話や伝承、絵本や昔話においてはたびたび顕在化してきましたが、現代日本ではそうした原始的な衝動が解放される機会やきっかけがあまりにも制限され、人々の目から隠されてしまっているのではないでしょうか。
21日にふたご座から数えて「所有と堪能」を意味する2番目のかに座で先月に続き2度目の新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分がいま一体どんなものや相手を必要としているのか、頭ではなく身体でしっかりと感じていきたいところです。
本能の壊れた動物
私たちは無意識のうちに「本能だけで生きている他の生物たちよりも、文明を持つ人間は優れている」とどこかで考えていますが、心理学者の岸田秀さんは逆なのだと言っています。人間は決して動物より高等な生物ではないし、むしろ「人間は本能の壊れた動物」であり、動物と比べて感覚もずっと鈍いし、特筆すべき武器や防具も持ちあわせていないポンコツであるがゆえに、文明を作らざるを得なかったのだと。
「人間は日常生活をひっくりかえすために戦争をする。そのことによってわれわれがいかに日常生活を憎んでいるかがわかる。」(『ものぐさ精神分析』)
人間が本当の意味で憎んでいるのは、きっとおのれの無力さでしょう。そして、力を持った存在でありたい、その力で他者を支配したいという欲望は、男性であれ女性であれ人間であれば誰しもが持っているものです。
今週のふたご座は、そうした自己をめぐる真実を少なからず垣間見ていくことができるでしょう。
今週のキーワード
無力であるがゆえに食べ、そして求める