ふたご座
悪と毒の持つ力
力なき正義は捨てよ
今週のふたご座は、ごろつきの道徳を地で行くよう。すなわち、一般に反道徳や悪徳とされているものの中に、既存の”社会”や”秩序”のどうしようもない閉塞感を突破していくヒントを見出していくような星回り。
民俗学者の折口信夫によれば、世にいう武士道は、歴史的には二つに分けなければならず、江戸時代以降に儒学者によって確立されたものは「士道」であって、対してそれ以前のものは「野ぶし」や「山ぶし」に系統をもつ「ごろつき」の道徳に他ならなかったのだと言います。
そして「変幻極まりなきもの、不安にして、美しく、きらびやかなるものを愛するのが、彼等の道徳であつた」(『ごろつきの話』)のであり、それは現代的な道徳観を基準からは大きく逸脱するような、心の暗黒面を肯定していくデーモニッシュなものであり、具体的には、敵討ち(かたきうち)や喧嘩や色好みなどの「悪」の行為も含められていました。
したがって、「睨まれれば、睨み返すのが、彼等の生活であった。即、気分本位で、意気に感ずれば、容易に、味方にもなつたが、また直に、敵ともなった。」のです。
6月13日にふたご座から数えて「社会と対決していく場所」を意味する10番目のうお座で、下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、もはやただ意味もなくはまり続ける必要のない枠やステレオタイプからいかに脱け出していけるかが問われていくことでしょう。
蟲毒の原理
「蟲毒」とは、器の中に毒を持った虫を入れていき、共食いさせてそこで生き残ることでさらに強まった虫の毒気を利用して敵を呪う呪術のこと。
同様に、私たち人間の中にも、そうした毒虫のごとき悪や暴力への欲望が眠っていますが、逆に言えば、こうした暗い欲求をさらに強い欲求によって浄化ないし昇華させていくことができるかこそがその社会が有している文化の底力なのだと言えます。
例えば、江戸時代の歌舞伎や人形浄瑠璃の演目などに、しばしば極限状況を生きる悪人たちが放逸するサスペンスだったり、血しぶきや生首の飛ぶ凄惨なシチュエーション、濡れ場と殺し場、拷問と男女の契り、苦悶と恋愛とが交錯するような濃厚な官能性のなかで彩られていく「悪」の形象が登場し、庶民たちの抑圧された欲求のはけ口となって人気を博していたような文脈とも相通じていくのではないでしょうか。
つまり、道徳倫理的にはもちろん「悪」は否定される訳ですが、舞台で繰り広げられる「悪」の行為には生理的・感覚的なところで蠱惑的な引力をもって引き込まれ、肯定されていく、一種の浄化作用的代行がそこで起きていく、ということ。
今週のふたご座は、そうした自分を奥深いところで蠱惑していくようなものや相手に、きちんと身を委ねていくことを大切にしていきたいところ。
今週のキーワード
強く自立した女性としての「悪女」になる