ふたご座
もう“人間”でなくていい
持ちつ持たれつ食べられつつ
今週のふたご座は、森の生態系や多様性を保つ役割を果たしている変形菌のごとし。あるいは、自身の担う役割の多様性をより深く許容していこうとするような星回り。
変形菌はアメーバのように粘液状になって動き回り、コケや菌類のように胞子をつくったりもする不思議な姿や生態をもった生物ですが、基本的には小さすぎて人の目に留まることはほとんどありませんし、彼らの生態系への影響もいまだに正確なことは分かっていないのだとか。
とはいえ、もちろん彼らも他の生物と同じで、生きていくためには食事をしていかねばなりません。変形菌のおもな栄養源はバクテリア(細菌)、他のアメーバ類などと競い合いながら食べている訳ですが、変形菌は競争相手が食べられない菌類(キノコやカビ)を栄養源にすることも可能なように進化していたり、異なる変形菌の種類間で餌の好き嫌いの棲み分けを行っていくことで、森の落ち葉や倒木の分解が偏らないようコントロールしているのだと言えます。
また、自分が餌を食べるだけでなく、別の種類の変形菌や小さな甲虫などに食べられたりすることで、持ちつ持たれつの関係を形成しているのだそう。特に、虫に自身が食べられることは、必ずしも悪いことではなく、胞子を虫の体につけることで遠くまで運んでもらって、結果的に種を撒くことに協力してもらっている訳です。
5月1日にふたご座から数えて「全体との関係」を意味する12番目のおうし座で、水星(コミュニケーション)が天王星(刷新)と重なっていく今週のあなたもまた、単なる損得勘定や利己主義的な生存戦略をこえたところで自分の果たすべき役割というものを考え直していきたいところ。
免疫というスーパーシステムの中で
変形菌は、その性の多様性でも知られています。ほ乳類のようにメス・オスの2つだけではなく、もっと多くの性がある場合もあれば、逆に1つのこともあり、2つの場合もある。そうした多様性を行き来できるだけの柔軟性こそが、彼らが数億年という長い歳月を生き抜いてきた秘訣なのかも知れません。
そして彼らと似て、自分ではないものを通じて、絶えず新しい自分を創り続けているものに免疫も挙げられます。
「ここではっきりしたことは、個体の行動様式、いわば精神的「自己」を支配している脳が、もうひとつの「自己」を規定する免疫系によって、いともやすやすと「非自己」として排除されてしまうことである。つまり、身体的に「自己」を規定しているのは免疫系であって、脳ではないのである。脳は免疫系を拒絶できないが、免疫系は脳を異物として拒絶したのである。」(多田富雄、『免疫の意味論』)
脳はしょせん身体の一部に過ぎなくて、たえず「免疫というスーパーシステム」の中で調整され、変化しながら存在する一方、免疫というのは、自分のごく一部分を整えたり組み立て直したりしているだけでなく、新しい部分や要素そのものを創り出しながら自己組織化していくのだそうです。今のふたご座もかくありたし。
今週のキーワード
脳を異物として拒絶する