ふたご座
呪いを落とす
呪語としての良寛
今週のふたご座は、「良寛もおどりておはす月夜かな」(小川芋銭)という句のごとし。あるいは、自分と他者とをノンバイナリーに捉えていこうとするような星回り。
良寛(りょうかん)は17~8世紀に生きた禅僧であり歌人。近隣の村里で托鉢を続けながら、子供たちと手毬をついて遊び暮らしたと言われています。 掲句は、そんな良寛の「風は清し月はさやけしいざともに踊り明かさむ老のなごりに」という歌を念頭に詠まれたもので、ひとりの村の翁として素朴な生涯を送った作者の人柄がよく表れている一句。
まるで見上げた空にかかるお月さまに良寛の存在を重ねるごとく、かといってそれで窮屈になったり過度に入れこみ過ぎる訳でもなく、ただ一緒に踊っているようにして共にある。そういう感覚を自然に抱くことができたのでしょう。
それはますます社会の不確定要素が増し、他者を敵か味方かなどの、二者択一的な仕方で捉えてしまいがちになっている現代人にとって、古くて新しいひとつのロールモデルを提示してくれているようでもあります。
8日にふたご座から数えて「遊び」を意味する5番目のてんびん座で、満月が起きていく今週のあなたもまた、0か1かといったバイナリー(二進法的)な見方を超えたところに自分を置いていけるかがテーマとなっていきそうです。
月のシャーマン鹿之助
良寛は大地震にあった友人への見舞いとして「災難に逢う時節には、災難に逢うがよく候。死ぬ時節には、死ぬがよく候。是はこれ災難をのがるゝ妙法にて候。」と言ったとされますが、それとよく似た言葉を放った人物に、戦国時代に「山陰の麒麟児」の異名で知られた山中鹿之助がいます。
まさに自国が攻め滅ぼされようとしている状況の最中、鹿之助は月に向かって「われに七難八苦を与えたまえ」と言いました。これは一見すると不可解な言葉でもあります。しかし祈りには呪いを落とすという目的があったことを考えれば、鹿之助の意図もそこにあったのではないでしょうか。
つまり、ここでは祈りが、その一言で流れや雰囲気を一変させ、いのちを硬直させる呪縛を外していく技法として用いられているのです。今週は、そうした呪い(バイナリー的思考)を落とすためのものとして言葉を使っていくといいでしょう。
今週のキーワード
ただなんとなく共にある