ふたご座
平明ということ
余白余情
今週のふたご座は、「吹きそめし東風の障子を開きけり」(池内たけし)という句のごとし。あるいは、深さを通り抜けた浅さの魅力に改めて目を向けていくような星回り。
一見すると、どこが面白いのかわからない、なんとなく物足りなさを感じる句。ただ声に出して何度かその情景を思い描きながら詠んでみると、平明ではあっても、けっして平凡ではないことが分かってきます。
作者のつくりだす句は、どこか洗練された素直な味がして、落ち着いた居酒屋でつつく湯豆腐のような、静かな奥行きがあるように思います。
強いて言えば、それは「余白の芸」であり、余情への愛。面白みのわからない人にはどこまでも分からぬ味ですが、深く入って浅く出たそれは、そういうものをこそ求めている人にとってはたまらない体験となるでしょう。
2月24日(月)にふたご座から数えて「みずからの到達点」を意味する九つ先のサインであるうお座で新月を迎えていく今週のあなたは、平凡ということのもう一段進んだところにある線に立つべく、そうした気配のする先人や同時代人を大いに参考にしていきたいところです。
小さな葦笛
では、どうすればそうした一段奥の線に行くことができるのだろうか。例えば、ベンガル出身の大詩人タゴールは、詩集『ギーターンジャリ』の中で次のように書いていました。
「あなたは私を限りないものにした。それがあなたの楽しみなのだ。この脆い器を、あなたは何度もからにして、またたえず新鮮な生命を注ぎ込んだ。この小さな葦笛を、あなたは山や谷に持ち回り、永遠に新しいメロディーを吹いた。あなたの手の不死の感触に、私の小さな心臓は喜びのあまりに限度を失い、言いようのない言葉を叫ぶ」
自分というものを、何者かから、それらを‟あずけられている”存在として見なすことができた時、もしかしたら先の一線を越えていくことができるのかも知れません。
自分を「からっぽの器」だと感じて、そこに充ちているものの来し方行く末を想うこと。今週はそういう仕方で、自身のキャリアということも考えてみるといいでしょう。
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