ふたご座
減じること、諦めること
だんだん素直になっていく
今週のふたご座は、「徐々に徐々に月下の俘虜として進む」(平畑静塔)という句のごとし。あるいは、自己の動的な再構築の過程をたどっていくような星回り。
掲句は昭和21年(1946)に戦地から帰った作者が、その翌年発表した作品のうちの1つで、戦地で実際に見た情景を描いたものですが、帰還後にみずからの胸の内に湧いてきた心情を映したものという解釈もできるかもしれません。
闇夜を照らす月の明かりは不安で縮こまった人の心に深い安堵をもたらしてくれますが、一方で、絶えず満ち欠けしていく月の姿には、この世のすべてはとどまることなく移ろいゆくのだという無常感を心の深いところで思い出させられもします。
23日(金)にちょうどふたご座のはじめで下弦の月を迎えていく今週のあなたは、「徐々に徐々に」光を減じていく月のように、移り変わりゆく自分の内面や気持ちの行く先を「これはもう仕方ないな」といったある種の諦めとともに見守っていくことになるでしょう。
増やしたり大きくしたりするだけが成長ではない。
そうやって何かを減らしていくこともまた、素直な自分らしさを確立していく上で大切なことなのだと、空にかかる月もあなたにそっと教えてくれるはずです。
静かなる変革
何か誰かを「敬う」とは、その相手の後ろ姿に心から「うなづく」ことができるということでもあります。
それは簡単なようで難しく、なぜなら「絶対に正しいこと」が世の中にないように、目の前の対象や相手を疑う心を持たない人はほとんどいないからです。
だからこそ優れた師というのは、弟子に「それはなぜそうするのですか?」と聞かれても、しばらく前方を見つめて、うなずいてから、説明せずに無言を貫くのです。
これは、「ああなってこうなって、こうなるんだ」と言葉で説明しようとしても、どれも正確には表現し切れないのです。
優れた師であるほど、不正確なことには黙ってしまうものなのです。しかし、それがかえって弟子に変革を引き起こす。こうした教え方をめぐる不思議というものがあるのだということも、どうか知っていておいてください。
そういう意味では、もしかしたら人間にとって最良の師とは「月」なのかもしれませんね。
その後ろ姿にうなづいていくこと、そして月の無言の教えを大切にすること。今週はこの2つのことを心に留めていきましょう。
今週のキーワード
諸行無常