ふたご座
ノスタルジーとインスピレーション
クジラ日和
今週のふたご座は、「ひさしぶり星を見てゐる鯨かな」(五島高資)という句のごとし。あるいは、どこかへ置いてけぼりにしてきてしまった大切な思いを、ここで改めて回収していくような星回り。
この場合の鯨が見ている「星」とは、頭上に広がっている夜空の星々なのか、暗い海の深くを漂う無数の発光する生命体(クラゲなど)のことなのか、それとも吐息にあわせて煌めく瞳=作者自身のことなのか。
いずれにせよ、それは「ひさしぶり」のことであり、さながら私たちがふと「生命はどこから来たんだろう?」と、素直に問いたくなるような瞬間の訪れと同じようなサイクルで巡ってくる特別な瞬間だったのでしょう。
同様に、8月8日(木)にふたご座から数えて6番目、「自己調整」を意味する位置にあるさそり座で上弦の月を迎えていく今週は、自分という存在全体をめぐる新陳代謝をはかっていくには絶好のタイミングとなっていくでしょう。
地上の生活は息苦しい。物理的には水中だって息苦しいはずなのに、優雅に過ごしているように見える海の生き物になったつもりで、今週はひとつ過ごしてみるといいいかもしれません。
葛藤と魅力
悩まない強さを持ち、気にしない鈍感さを備え、すぐに忘れるずるさを発揮できる人は、「憎まれっ子世に憚る」という言葉の通り、確かに社会では成功しやすいです。さらに言えば、繊細さを騙り周囲を欺くことができる人ならば、もはや無敵でしょう。
これは、若いうちはまったくもってその通りだと思います。
けれど、友達が少なくても、いつまでも小さなことで悩んでいても、本当はネクラでも、弱さから逃げずそこに留まり続け、あるいは何度も過去へと戻ってきた人の顔は、年とともに魅力を増していきます。
あるいは、周囲の誰しもが忘れてしまったことだとしても、あなただけは覚えている。そういう記憶こそが「ひさしぶり」に見えてくる光景なのかもしれません。
今週のふたご座は、ノスタルジーとインスピレーションのはざまで時に激しく揺れ動くこともあるでしょう。
けれど、そうした葛藤の向こう側にしか、開いていくべき未来はないのだと、どこかで予感していくはずです。
今週のキーワード
海獣の子供