ふたご座
本音を放つ
もっと憤っていい
今週のふたご座は、「夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり」(三橋鷹女)という句のごとし。あるいは、あっけらかんと本音を開陳していくような星回り。
作者の憤りはどこへ向けられたものなのか。おそらく作者が嫌悪しているのは何か特定の食べ物のことだけではなく、「健康にいいから」とか「心配だから」と口にしながら自分へもっともらしく忠告してくる一群の人々の存在。
もちろん、そこには「そうだよね、食べなきゃ」と思ってしまう自分自身の流されやすしさや弱さも含まれてくるでしょう。
だからこそ、あえて句の世界ですっぱりと言い切っている姿を詠んでみせたのでしょう。無責任な他人に向けて、そして他ならぬ自分自身へ向けて。
作者は当時37歳。今でこそ人生100年と言われる時代になってきましたが、戦前の1930年代の世界ではもはや無茶も甘えもわがままさえも許されない年齢という雰囲気がずっと強かったはず。
いまだに名句として読み継がれているのは、そうした文脈に対するあっけらかんとした抜け感がそこにあるからなんです。
3日(月)のふたご座新月へ向けていろいろなことが収束していく今週のあなたもまた、作者ほどではないにせよ、スッと本音を語っていく瞬間を迎えていきたいところ。
情熱という能力
ニーチェの『人間的、あまりに人間的』(池尾健一・中島養生訳)の中にある「軽蔑の火の中で」という断章を見ていくと、
「自分の不名誉になるような考えを最初に大胆に表明することは、自立への第一歩になる」
という一文が出てきます。
もちろんそれをいざ実行してしまえば、生半可な知り合いや常識人たちは怖気づいてしまうでしょうし、あなたの元から離れていくでしょう。けれど、ニーチェはおそらく自分自身の経験をふまえ、実感を込めて次のように続けるのです。
「能力に恵まれた者なら、この火のなかを潜り抜けなければならない。そうすることで彼がいっそう自分らしくなっていく」
のだと。そういう意味では、掲句の作者は身に着けた技巧以上にきっと能力があったのでしょう。自分の人生を生きようとする「情熱」という名の能力が。
今週のキーワード
人間的人間