ふたご座
かすかな結びつきの感触
我と汝
今週のふたご座は、「汝も我見えず大鋸を押し合うや」(安井浩司)という句のごとし。あるいは、この世界に投げ込まれて在る「我」の動きをなんとか活性化していこうとするような星回り。
「汝」とは「我」と同じかそれ以上の内実を持つことを意識されながら関わる他者のこと。
掲句において、「汝」との関係に巻き込まれることによって「我」は勝手に行為を完結することができなくなって、そのまま時空は引き裂かれどこだか分からない見知らぬ場所、nowhereへと流れてゆく。
その意味で、「汝」とは「我」の個人的完結を回避させ、生き続ける理由を与えるために到来する者でもある。
ここ言う「我」と「汝」とは、まさにダブルボディーのふたご座そのものであり、あなたが「汝」に自分を重ねるのであれ、「我」に重ねるのであれ、誰か何かと出会い、手を取り合っていくことではじめて、そこに生きた証しとしての言葉紡がれていくのです。
今週はそんな言葉の“押し引き”を通じて、生きているという実感を取り戻していくことができるはず。
大きな同一性を取りもどす
例えば、「この子はおばあちゃん(おじいちゃん)の生まれ変わりだ」などと誰かが言うのを聞いたり、実際に自分が言われたことはないでしょうか。
死んだらそれで終わり、原子か塵に還元されて無になるのだという近代科学主義的なイデオロギーにこだわっている人にはずいぶん奇異に聞こえるかもしれません。
ですが、こうした異なる個人の中に「魂の同一性」を感じとり愛でようとする伝統は日本だけにとどまらず、太平洋地域に住むネイティブの文化や伝承にも特別の結びつきを語る事例が豊富に見られるものです。
たえずノイズのつきまとう雑多な情報環境の中で生きざるを得ない現代人にとって、そうしたかすかな結びつきは他のガラクタと一緒になって埋もれがちであり、最も見失われやすいものの1つと言えます。
個人というのは大きなクラスターの一部に過ぎず、あなたはそこでは誰でもあって、誰でもないのです。
今週のあなたは、そうした現実の層に分け入り、どこか見失っていた結びつきを取り戻していくことができるかもしれません。
今週のキーワード
魂の同一性を確認するための言葉