ふたご座
全身を貫くような意図を持つ
心から乞うほどの相手
今週のふたご座は、「雪はげし抱かれて息のつまりしこと」(橋本多佳子)という句のごとし。あるいは、自分の中にとても収めきれず、溢れ出してくる言葉を鋭く強く浮彫にしていくような星回り。
作者は38歳のときに夫と死別しました。掲句は、激しく雪が降るなか、生前の夫に抱きしめられて息がつまったことがあったという回想から詠まれた句ですが、「つまりしこと」の最後の6音はいわゆる「字余り」になっています。
575の17音に収めきれない届かぬ恋情、亡き夫を乞う気持ちがこうしたところでもさりげなく表現されていて、こういう句に触れると、ただ一途な女というだけでは決して終わらないぞという、俳人としての凄味のようなものをも感じさせられます。
そう、言葉を通して人に思いを伝えていく際には、情熱的なだけではダメなのです。
猟を熟知している猟師のごとき老獪さで言葉を起こし、氷のような冷静さで掲句の作者のように‟仕掛け”ていく。 獲物が強大であればあるほど、手が届きそうにないほどに、漁師はますます精神を研ぎ澄まし、腕によりをかけて猟にいそしむ。
そんな風に乞う相手を、強大な獲物を、あなたは持ちえているでしょうか?
今の、そして2019年のふたご座のあなたは、小手先のスキルアップや器用な立ち回りなどではなく、そうした全身を貫くような鋭い意図を持てるかどうかを問われていくはずです。
自分の思いを彫刻する
ルネッサンスを代表する彫刻家ミケランジェロが人類に残してくれた遺産のひとつに、次のような言葉があります。
「余分な大理石がそぎ落とされるにつれ、彫像は成長する。」 (The more the marbles wastes, the more the statue grows.)
例えば、くだらない駆け引きをしなければ得られないような恋や友情、関係性であるならば、こちらから願い下げする。
今のふたご座には、それくらいのひたむきさで自分と向き合っていくくらいが、ちょうどいいのかもしれません。
ここでひとつ彫刻家になったつもりで、人間関係であれ自己の想いであれ、本当に大切だと思えるところだけを残して、あとはノミでそぎ落としていくといいでしょう。
ただし間違っても、自分を無力などとは思わないでください。
それは甚だしい誤解であり、逆にそうした「無力の国」を作りあげ、あなたをそこへ閉じ込めたがる他者こそ、そぎ落とすべき対象の本丸なのだと覚えておいてください。
今週のキーワード
自分を一色に染め上げる