やぎ座
終わりと始まりの交錯
きちんと終わらせるということ
今週のやぎ座は、「熱燗や国滅ぶとき歌おこる」(藤井元基)という句のごとし。あるいは、ひとつの終わりを迎えていくなかで、新たな始まりを予感していくような星回り。
詩歌は民族の発生とともに生み出され、喜びのときも苦しみのときも等しく人々の口にのぼっては励ましてきました。掲句では「国滅ぶとき」とあり、「歌」が相当な難産とともに生み出されたことが分かります。
しかしそれは、じわりと内側へと広がりながら心地よい酩酊状態へと導いてくれるものでもある。
これを、苦労してきた経験を教訓と励ましに変えようというメッセージと置き換えてしまうと途端に野暮な話になってしまうのですが。
ここ最近、あなたのなかでようやく終わりを迎えた現実から何を感じとり、どう影響を受けたのかを明らかにしていくことは、まさに「歌」をおこしていくプロセスにほかならないのだと言えるでしょう。
滅びの美学
仏教には観想というイメージトレーニングの瞑想修行の伝統があり、その中に人体が死後に膨張し、腐乱して蛆がたかり、野良犬やカラスに食い荒らされて、やがて白骨となるまでのプロセスを九段階に分けて観想することで、煩悩を防ぐというものがあります。
朽ちてゆく亡骸には、凄惨でありながらもどこか人を魅了する美しさがありますが、それは見る者がそうした死のプロセスに、自然へ還り万物循環をめぐらしていく上での、滅びの美学を重ねるからでしょう。
火を燃やし、新たな動力源にしていくことも、そうした万物循環の中でのフェーズであり、やがてはぐるりと巡って、あなたもまた誰かの燃料にならんと朽ちていくのです。
今週のテーマである「歌をおこす」ということは、ある意味でそうした循環のサイクルを受け入れ、その中に入っていくという意志表示であり、そこではあなたがどんな美学を持っているのか問われていくでしょう。
もしそういう時を迎えた際に、不完全燃焼することなくよく燃えるように、悔いなく、今を完全燃焼させていくことが、せめてもの人や世界へのやさしさなのかもしれません。
今週のキーワード
武勲(いさおし)