やぎ座
厳しくあることと交わること
寒中の梅
今週のやぎ座は、「寒梅や火の迸(ほとばし)る鉄(まがね)より」(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、優しさよりも厳しさこそが、自分のために必要となっていくような星回り。
今のあなたに必要となってきているのは、確かにこのようなプロセスにほかなりません。寒中の梅は、さながら鍛冶屋が真っ赤なうちの鉄を打ちつけ飛び散らせる火花のよう。寒の冷たさと火の熱さが激しく交わってこそ、寒梅は開くというわけだ。
つまり、他者を情愛と共感によって受け入れていくのではなく、むしろ自分を厳しく律して、あるべき理想や方向性を取り戻させるために叱咤激励していくこと。
今週あなたは、どこまで心を鬼にして厳しい判断を貫いていけるかが試されていくことになるでしょう。
生の全体性を受けとるために
夭逝したフランスの思想家シモーヌ・ヴェイユは、自らに厳しいきわめてストイックな人間でした。彼女は人間の魂のもっとも重要な欲求として「根をもつこと」をあげ、同時にもっとも定義の難しい、欲求のひとつであると述べていました。
「人間は、過去のある種の富や未来へのある種の予感を生き生きといだいて存続する集団に、自然なかたちで参与することで、根をもつ。自然なかたちでの参与とは、場所、出生、職業、人間関係を介しておのずと実現される参与を意味する。」
さまざまな縁を通じ、広義の意味での「富と予感」を備えた集団に参加することで、人は初めて「根を持つ」ことができると。さらに彼女はこう続けます。
「人間は複数の根を持つことを欲する。自分が自然なかたちでかかわる複数の環境を介して、道徳的・知的・霊的な生の全体性なるものを受けとりたいと欲するのである。」
「生の全体性を受けとる」ために、人は新たな根を欲する。ここが彼女の伝えたいことの核心でしょう。
よくいわれるように「癒し(heal)」とは「making whole(全体にする)」という意味から来ています。それを彼女の言説に当てはめていくと、人は「道徳的・知的・霊的」に癒されていくために、さまざまな集団に参加し、その影響を自然なかたちで関わらせていくのだ、ということになります。
どんな集団へ参加していくことが、そうした根源的な欲求を満たしてくれるのか。まずはそんなところから自分を疑い、厳しい基準で周囲を見渡していくことです。
今週のキーワード
『根を持つこと』