やぎ座
ビジョンと引き算
未来の背中を思い描く
今週のやぎ座は、「魚眠るふる雪のかげ背にかさね」(金尾梅の門)という句のごとし。 あるいは、彫刻家のように、やがてやって来る未来の自分を掘り出していくような星回り。
まるで彫像のように美しい一句ですね。おそらくは作者が実際に見た光景なのでしょう、冬の日の池か何かでじっと動かない「魚(鯉でしょうか)」がいて、まるで眠っているようだと。
そんな魚の「背」に向けて降り積もる雪が手前に見えているが、雪そのものは水面までしか届かず、「魚」は相変わらずこちらに背を向けて眠り続けていると。
ひるがえって、人はたいてい自分の背中などは意識せずに生きていますが、「親の背を見て子は育つ」というように、背中には人の生き様がよく出るものです。
あなたは将来、どんな背中を人に見せていたいのでしょうか?
ある意味で、まだ眠ったままの「魚」とは、現在の自分には手の届かないところにある未来の自分の姿とも言えるかもしれません。理想の自分の在り方をイメージしつつ、どうデザインしていくか、今週はひとつ考える時間をとってみるのもいいでしょう。
最初に振るうべき鑿の一点
現在も「ダビデ像」などで世界中に知られ、ルネッサンスを代表する芸術家で彫刻家でもあったミケランジェロは、次のような言葉を遺しています。
「余分な大理石がそぎ落とされるにつれ、彫像は成長する。(The more the marbles wastes, the more the statue grows.)」
掲句があれほど美しい一句に仕上がっているのは、もしかしたら景色をまっしろに染めあげる雪が余計な景色や背景の猥雑さをそぎ落としてくれているからなのかもしれません。そういう意味では、雪というのは人間が見るべきものをきちんと見るために自然が与えてくれる恵みであり、大きなチャンスなのです。
未来のビジョンを掘り出すときのコツも同様です。足し算でいろいろと付け足していくのではなく、これもあれもいらないとできる限りそぎ落としていくことで初めて、最初にのみを入れるべき一点が見えてくるのです。
今週のキーワード
彫像は成長する