やぎ座
自然と顔を合わせてみる
行きつ戻りつ
今週のやぎ座は、『月の夜を蟹ゆでる湯のたぎりをり』(大橋富士子)という句のごとし。あるいは、いろいろな意味で英気を養っていこうとするような星回り。
これは晩秋から初冬にかけて海でとれる蟹、タラバガニやズワイガニあたりだろうか。ぐつぐつに湯を煮たてた大鍋に、適当に白だしを入れて生きた蟹をいれ、ふたを閉じて待つこと10~15分ほど。
茹ですぎては風味が落ちるが、茹で足りないと肉がしまらない。大鍋からわきあがる湯気の熱が、冷え冷えとした月明かりの中、身体を芯から温めてくれる。後は目にも鮮やかな蟹をほおばり、それをあてに酒をあおれば、もはや言うことはない。
むろん、掲句はなにも本能的な欲の限りを尽くした一句とは限らない。ふいに鍋で煮られる蟹に憐憫の情をおぼえ、それゆえにこそ、ひとしお月光の冴えを感じたのだとすれば、その方がよっぽど人間的だろうとは思う。
私たちは、生まれてこの方、いつだって動物と人間とのはざまで行きつ戻りつしてきたのであり、それだけは死ぬまで変わらないだろう。
10月29日にやぎ座から数えて「生命力の再燃」を意味する5番目のおうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分を芯から温めてくれるものを取り込んでいくべし。
自然のふたつの顔
自然はその圧倒的な力で人間を脅かしもすれば、その大いなるふところで人間を養いもすれば、寄り添い、包みこんでくれます。どちらが素顔で、どちらが表の顔なのかということは、人間の都合だけで決めることはできませんし、いずれにせよ人間はその両方の顔とともに、自然の中で生きていくしかないのです。
それでも掲句を詠んだ作者の胸中には、人間を養い、包み込んでくれるものとしての自然が蟹を通じて、その顔をこちらに向けているようにも感じます。今日まで自分が無事に生き延びてこれたことを、祝福してくれているかのように。
ともすると現代人は、自然というものを保護の対象として自分より下に見てしまいがちですが、本来どうしたって人間の手に余る代物なのだということがここで思い出されます。
その意味で、今週のやぎ座もまた、そうしたこちら側のコントロールを超えたものとしての自然を身近なところに見つけていくことを意識してみるといいでしょう。
やぎ座の今週のキーワード
何に/誰に支えられて在るのかを直接的に実感していくこと