やぎ座
秩序はダイナミックであるべし
作家の孤独を支えたもの
今週のやぎ座は、『梅散りて白磁の鉢の夜夜ひとり』(横光利一)という句のごとし。あるいは、精神の秩序を取り戻していこうとするような星回り。
机の上か、床の間か。白磁の鉢にいけられていた梅の花が散っている。すでに本格的な春の訪れを知らせるあたたかい日もあるけれど、まだ冴え冴えとした厳しい空気の方が強い夜に、ひとりで部屋にこもっているというのでしょう。
作者の本業は小説家であり、夜の静けさの中で家族と離れ、連日書斎にこもって仕事をすることもめずらしくなかったはず。掲句の「ひとり」は「の」の使い方から、「白磁の鉢」にかかってくる感も否めませんが、ここは「梅が散った白磁の鉢に夜夜をひとり仕事している」という意味にとりたいところ。
そして、この「ひとり」には、作家としての孤独をも含んでいるわけですが、白磁の鉢の研ぎ澄まされた白さや早春の夜の空気を好んで、自身の作家活動を支える何かをそこに見出していたのかも知れません。
その意味で、7日にやぎ座から数えて「探求」を意味する9番目のおとめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自身の精神的な活動を支えてくれるものを改めて見出していくことがテーマとなっていきそうです。
ゼウスとディオニソス
レヴィ・ストロースの『神話の構造』には、天から生まれてきた種族と、地から生まれてきた部族の、その子孫として人間は可能かということが論じられていました。要するに、反対物を統合する者としての人間の運命の根源を神話の構造の中に見出そうとした訳です。
例えばギリシャ神話であれば、だんだんと首長制を確立し高みに登りつめていくゼウスは、その反対の分身として、酒と狂乱の神として絶えず母胎回帰的であろうとするディオニソスを必要とするのだと。自身もまた父であるクロノスに反旗を翻して王権を獲得したゼウスにとって、このこのディオニソスこそ自身の中の反社会的なものの表れなんですね。
これは権力者としてのゼウスの立場からすれば、ディオニソスは本当は切り捨てなければならないんだけれど、それが自分の活力の源だということを知っているために、簡単には切り捨てられないということでもあります。
これは日本神話のアマテラスとスサノオの関係にも言え、アマテラスだけでは全体的なまとまりは作れない。常に危険な存在としての後者がいて、追放はしなくちゃいけないけれど、じつは必要な存在であるということ。
今週のやぎ座もまた、自分の運命をよりダイナミックなものにしていく上で欠かせない相手や図式とはどんなものなのか、改めて浮き彫りにしていくことがテーマとなっていきそうです。
やぎ座の今週のキーワード
反対物の統合