やぎ座
ボーちゃん
腰を据えるべき状況がある
今週のやぎ座は、『あの雲の昃(かげ)り来るべし秋の晴』(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、スローな関わりをますます大事にしていこうとするような星回り。
秋晴れの空を見ている。時が経つにつれて、少しずつ日が翳ってきて、あの雲もそろそろ翳ってくるはずだ、などとぼんやり考えながら空を仰いでいる。言ってみれば、それだけの一句。しかし、よほどぼーっとし続けることに耐えられなければ詠むことができない句でもあるはず。
ただ秋の空があるだけの、何の変哲もない風景であっても、こうしてじーっと眺めていれば、青空から夕空への移ろいや、雲の流れ、光と蔭の塩梅、大空を横切っていく渡り鳥など、そこには豊かな表情が浮かんでくる。
考えてみればそれは人間相手でも同様で、一見無表情だったり素っ気なく感じる相手であっても、こちらが腰を据えてじっくり付き合っていけば、時間の経過とともに反応や表情の出方も変わってくるもの。
今はYouTubeやTikTokなどでも短い視聴時間にしか耐えられない人がますます増えているだけに、ますますやぎ座特有の腰の重さが重宝される状況が増えてきているように思います。
18日にやぎ座から数えて「対人的な関わり」を意味する7番目のかに座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、いつも以上にスピードアップしがちな人間関係に、ゆっくりと時間をかけることを意識してみるといいでしょう。
旅の醍醐味はどこにある?
文学研究者の芳賀徹は、日本の紀行文学の最高峰とされる松尾芭蕉の『奥の細道』のクライマックスは、通説的には松島や平泉など、いわゆる名所旧跡とされ、伝統的に和歌に詠みこまれてきた場所にあるとされるのに対し、むしろそういう伝統文化の形式がほころびていく出羽あたりにあるものとして読まれるべきだろう、ということを述べていました。
和歌に詠まれた名所やその痕跡としての歌枕なんてものは、しょせん京都を中心とした都会の貴族文化をモデルとして辺境を切り取ろうとする眼差しの副産物に過ぎず、逆にそういうお高くとまった都会人の固定観念や想念体系が、みちのくに息づく古代的な地の霊のようなものに触れ、破られ、打ち捨てられるにしたがって、目に映ってくるものが生き生きと立ち上がってくるそのリアリティこそ、大切にされるべきだと言う訳です。
このあたりの話は、おそらく今のやぎ座の人たちの星回りにも通底するのではないでしょうか。つまり、さまざまな記号やしがらみにがんじがらめになった「都会人」である以前に、お前は現に生きているひとりの人間であり、生命体だろう?と。
今週のやぎ座の人たちは、自身自身であれ向き合う相手であれ、そうしたほころびや破れということをこそ肯定的に受け入れてみるといいでしょう。
やぎ座の今週のキーワード
凝り固まった思い込みやプライドを捨てて、ほや~っとしていくこと