やぎ座
ありうべき未来に戻るために
無心の取り組み
今週のやぎ座は、節目の書初めのごとし。あるいは、ピンとくる道具をきちんと選んで、自分を未来へと引き出し、のびやかに打ち出していこうとするような星回り。
日ごろからここぞという重要な目標や指針を掲げるときには、半紙に墨で書いてみることをおすすめしていますが、その際にもっとも鍵となるのは筆、墨、硯などの道具選びです。
よく手に馴染んだものを使うもよし、その時にピンときたものを使うもよし。ただし特に筆に関しては、おなかや腰に“響く”もの、自然にスッと背筋が伸びるものを選んでいくこと。要は手先だけでなく、身体とつながって、ますます全身をのびやかにしてくれるような感じがするかどうかがポイントなる訳です。
そういう道具は、使えば使うほど愛着が湧いてきますし、身体のリズムも整えてくれます。そして墨汁もありますが、ちゃんと硯に水を差し、時間をかけて墨を摺っていくことも大切です。この場合の「摺る」とは単に手に力を入れてこすることではありません。むしろ、下半身をはじめ全身でうみだしていくエネルギーを、硯の上に滑らせながら、ゆっくりと練り上げ大きくしていくといったイメージに近いでしょう。
墨に粘りが出て香りが部屋に満ちてきたら、いよいよ一字一字ていねいに書いていく。うまくいけば、自分自身の奥のものがしっかりと書に宿っていきますし、そういう時はたいてい一連の作業に無心で取り組めているものです。
9月18日にやぎ座から数えて「スタイル/方法論」を意味する6番目のふたご座で形成される下弦の月へと向かっていく今週のあなたもまた、自分なりの美学や流儀をていねいに見つめ直してみるべし。
引いて、越すということ
先の「書初め」のような無心の取り組みというのは、ある種の「引っ越し」に置き換えることができます。私たちはふだん、特別何か意識せずに生きていても、それなりに人生は前に進んでいくものと考えがちですが、これはとんでもない勘違いです。
例えば、引っ越しとは過去から未来に「引いて」「越す」と書きます。これはつまり、生きるということが絶えず「未来に戻る(バック・トュー・ザ・フューチャー)」プロセスであるということの端的な表れであり、これまでの古い自分からいったん身を「引いて」、来たるべき新しい自分へと「越して」いくことで、初めてそれは成立していきます。
ただ、この「引く」という過程をすっ飛ばすと、どうしても古い自分を引きずってしまい、過去に作り出した残像に執着して、迷いの世界に入り込んでしまう。書の喩えで言えば、きちんと「摺る」ことをおろそかにしてはいけないのも、こうした理由からでしょう。
その意味で今週のやぎ座もまた、未来へきちんと「引っ越し」ていくべく、心身が整ったと感じられるまで、十分に「摺る」や「引く」時間をとってみるといいでしょう。
やぎ座の今週のキーワード
余計な頭をなくしていく