やぎ座
猛烈な発露
ひそかなる鬼の暗号
今週のやぎ座は、魂の叙事詩としての数学のごとし。あるいは、みずからの人生の方程式を組み直していくような星回り。
かつて寺山修司は自叙伝である『誰か故郷を想はざる』のなかで、「数字では何で出来ているか。(…)それは月光にぬれた法則たちのパーテーなどではない。不動の定理の戸籍簿でもない。ひそかなる鬼の暗号などではないだろうか」と書いた上で、次のように続けました。
数学の答案で、「二と二でいくつ?」という初歩的な問題が出されたとき、「荷と荷」で「死」という思想に耐えられず、少なくともそれは「産」でなければならないと思ったぼくの社会への目覚めが、「二と二で三は間違いだ」として物笑いにされた。しかし、数の中の予言を読みとらないものに、どうして世界を数えることなど出来得よう。真理とはつねに数の陰にひそむ魂の叙事詩だ。
しかし現実主義者であればあるほど、社会では「二と二で四」にきちんとなってくれることなど滅多にないことを知っているはずですし、「少なくともそれは「産」でなければならない」と考えた若き寺山の感性が、浮世離れしたロマン主義者の世迷いごとどころか、きわめて真剣かつ現実的な見立てであると感じるのではないでしょうか。
その意味で、23日にやぎ座から数えて「サバイバル」を意味する3番目のうお座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、自身の魂を生き延びさせていくための方程式はどちらなのか、どんなものなのかということを改めて考えてみるといいでしょう。
三上寛の『夢は夜ひらく』
生きていれば、みずからの胸のうちに苦い思いが溜まってしまうことがあるものですが、そこでただ愚痴やストレス発散に向かうのではなく、ひとつの「夢」へと昇華させていくことこそ、今週のやぎ座のテーマなのだと言えるでしょう。
その点、かつて田舎者丸出しでライブに登場した三上寛は、誰もが知っている『夢は夜ひらく』に、全身全霊でオリジナルの歌詞をのせて歌い、そのライブは伝説となりましたが、それくらいの猛烈なエネルギーの発露が今のやぎ座のあなたにも必要なのかも知れません。
七(質)に二(荷)をたしゃ九(苦)になるが
九(苦)になりゃまだまだいいほうで
四(死)に四(死)を足しても九(苦)になって
夢は夜ゆらく八百屋の裏で泣いていた/子ども背負った泥棒よ
キャベツひとつ盗むのに/涙はいらないぜ
やぎ座の今週のキーワード
切実な夢としての方程式