やぎ座
泉となって湧きだす
枯れた泉の作り方
今週のやぎ座は、ハイデガーの言う「頽落」を見直していくような星回り。あるいは、空気を読み合う「みんな」からの逸脱。
例えば、世間話というのは天気の話だったり昨日見たテレビの話だったり、必ず「みんな」が分かるようなことしか話されず、その当たり障りなくスムーズなコミュニケーションに割って入って「本当にそうか?」「実際にはどう感じているの?」などと口を挟むようなことはあってはならないのです。
そこでは、1つの問いに対してじっくり考えたり、自分にとって本当に大切なものは何かを掘り下げるようなことはせず、その時どきのみんなの論調に合わせて関心や話題は次々と移り変わり、軽薄な好奇心が転がるままに、どこまでが本人の考えで、どこからが本人の思っていないことなのかが見分けられないほどに立場や意見が曖昧なまま、自分たちが世間や「みんな」に属し続けていることをひたすら確認していく訳です。
こうした「世間話」「好奇心」「曖昧さ」の3つに特徴づけられる生き方こそが、世の人が抗うこともむなしく飲み込まれているものであり、ハイデガーはそれを「頽落(たいらく)」と呼びました(そのまま訳せば「没落」ないし「退廃」)。
その意味で、5月1日にやぎ座から数えて「主観」を意味する5番目のおうし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そこから完全に抜け出すことは難しく、どんどんその深みにはまりがちな「頽落」と自分との距離感を今一度確認していくべし。
腐れ神の湯治劇
映画『千と千尋の神隠し』の中で主人公の千(せん)が働く湯屋に、腐臭を発するヘドロの塊のような姿になった神さまが客としてやってきて、風呂を楽しむシーンが出てきます。
千はそこで腐れ神の体の奥に何か引っかかっているものを見つけ、従業員総出で引っこ抜いてみると、出るわ出るわのガラクタの山。そうしてすっかり体からそれらが取り除かれると、腐れ神は立派な川の神へと姿が変わり、龍となって空を飛んでいったのです。
こうしたドラマが起きるのもまた生きている不思議のひとつと言えますが、今週のやぎ座は、まさにそうした“回復”を遂げる流れに乗っていきやすいでしょう。
疲労が蓄積してくると、どうしても人は安易なパターンや失敗しないやり方へと落ち着いてしまうものあり、そうして世の人はそうと気付かないあいだにいつの間にか「頽落」していくのだと言えます。
その点、今のやぎ座のあなたならば、本来の名前である千尋に戻っていった千のように、改めて自分が何者であるかを思い出し、堂々と名乗りをあげていくことができるはず。
やぎ座の今週のキーワード
流れよわが思い、と世人は言った