やぎ座
部屋との交わり
配置としての世界
今週のやぎ座は、アトリエに布団を敷くアーティストのごとし。あるいは、環境に形作られていく自分であろうとするような星回り。
アーティストと言えば仕事部屋が汚いというのが世の常識のようになっていますが、ずっと昔はそうでもありませんでした。彼らがまだ「職人」と呼ばれていたいにしえの時代や中世において、画家や彫刻家のアトリエは信じられないくらい整理整頓されており、優れた職人であるほど乱雑さとは無縁だったのです。
ただし近代社会に入ると、やがて彼らは職人であることをやめてアーティストとなったとき、その制作環境もロールモデルと共に大きく変わっていったのでしょう。
優秀な職人であることよりも、美の冒険者たらんとするようになれば、仕事場もまたその悪戦苦闘を自然と反映するようになり、書き損じが丸められた紙くずやいたるところに付いた絵の具のしみ、机のうえに積み上げられた書類や資料の山などは、不快なノイズどころか、むしろインスピレーションの呼び水として、あって然るべきものとなっているように思います。
そうであるからこそ、足し算とは逆の引き算としてのアーティストの整理整頓術も成立するようになるもの。その意味で、4月1日にやぎ座から数えて「場づくり」を意味する4番目のおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、これからの時代に即した環境づくりやモデル設定に改めて取り組んでいきたいところです。
か身交ふ
例えば、人間の精神活動の本質にある「考える」という動詞はもともと「か身交ふ(かむかふ)」という言葉から来ているのですが、最初の「か」には意味はなく、つまり「身」をもって何かと「交わり」、境界線をあいまいにしていくことで、そこに新たな思考を生みだし、精神の糧を見出してきたのです。
車の行きかう音や鳥の声、葉のそよぎに、月から漏れる柔らかな音楽。そういうものを見たり聞いたりしながら歩いているうちに、外なる自然と内なる自己が交わって、親密な関係となり、そこで頭の中で考えているだけじゃ思いつかないようなことが引き出され、いつの間にかこれまでとはまったく異なる人生を歩んでいた。そんなことだってあるでしょう。
そういう意味では、人間は身体を媒介として、日々自分の家や部屋と交わり、親密な関係を築きながら生きているのであり、その関係の在りよう次第で思考のみならず、運命までもが左右されていくのだと言えます。
今週のやぎ座は、そうしていろいろなものと交わっていくことのできる可能性について思いを馳せてみるのもいいかも知れません。
やぎ座の今週のキーワード
連れ去り、連れ去られ