やぎ座
業火でGO
女体の業
今週のやぎ座は、「をんなわれを風呂に沈めて猫の恋」(加藤直子)という句のごとし。あるいは、収まるどころか尽きることを知らない内なる情念があぶり出されていくような星回り。
決してうまい句でも、高尚な境地にいたった訳でもない。むしろ、正直すぎるくらいにみずからの心情を図太く詠った一句と言えます。
華麗な言葉の組み合わせや、自分の価値を高くしようという演出なども一切無視して、「をんなわれを」と言い切ることで、ずばりと女体の業のようなものを「猫の恋」に重ねてみせたわけです。そうでなければ、窓の外から聞こえてくる恋猫の声が、いつしか風呂の湯を通して自分自身の身体のうちへと沁みとおってしまったような心地がしたのでしょう。
しかしそれも偽りなき大人の情念であり、胸の奥に秘めていた炎のゆらぎというのなら、これも一生のうちの大事な一瞬に違いありません。
同様に、3月10日にやぎ座から数えて「等身大」を意味する6番目のふたご座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、世間体や年相応など関係ない、うそいつわりのない自分の実感を吐きだしていくべし。
「アゲンスト・ネイチャー」としての人間
心理学者の河合隼雄がどこかでユングの言葉として「ヒューマン・ネイチャーはアゲンスト・ネイチャーだ」という言葉を紹介していましたが、コロナ禍が世界をすっかり変えてしまい、地球を我が物顔で搾取し続けてきた人間たちを黙らせるようになってから、しきりとこの言葉が思い出されます。
感染症やウイルスもひとつのネイチャーだとしたら、それらと抗うことで生き延びようとしている人間たちはまさに「自然に逆らう存在」としての「アゲンスト・ネイチャー」に他ならないはず。
もちろん人間は矛盾した存在ですから、どこかで自然と同調し、自然のために(フォー・ネイチャー)存在している部分も持ち合わせていますし、そうでありたいと願って菜食主義を貫いたり、リサイクルへの配慮を心がけている人も多い訳ですが、それでも、どうしたって自然に逆らい、彼らとの調和からはみだしてしまう。それを悪だ罪だと見なし過ぎれば、私たちは満足に日常生活を送ることができなくなってしまうでしょう。
その意味で、今週のやぎ座もまた、どうしたって不自然にはみだしてしまう自分自身を受け入れ、改めて肯定していくことがテーマとなっていきそうです。
やぎ座の今週のキーワード
ヒューマン・ネイチャーはアゲンスト・ネイチャーだ