やぎ座
しるしを見つける
たてがみのやうなもの
今週のやぎ座は、「恋猫に颯(さ)とたてがみのやうなもの」(いのうえかつこ)という句のごとし。あるいは、誰か何かに特別な“しるし”を見出していくような星回り。
恋する猫の背に、颯爽と馬のたてがみのようなものが生まれているのだという。ただそれだけの句ですが、掲句の恋猫とはおそらくオス猫のことなのでしょう。
颯爽とたてがみをなびかせて走る馬のように、これからメス猫に会いにいくのかも知れません。そしておもしろいことに、作者はどこかで自分をメス猫の立場において恋猫を見ているのです。
普通はなかなか気付かないような「たてがみのやうなもの」を見つけることができたのも、理性的な人間の視点から恋猫をただ近所の野良猫の一匹として見ていたからではなく、どこか同じ目線で見ていたため。もしかしたら実際の人間にも、見る人が見れば「たてがみのやうなもの」に類する何かが生えたりするのかも知れません。
その意味で、2月8日にやぎ座から「感情の激化」を意味する5番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、月並みでシラケた常識人のふりなどかなぐり捨てて、自分にとって特別な“しるし”を見つけ出してみるといいでしょう。
カインの末裔のしるし
特別な“しるし”で思い出されるのが、ヘルマン・ヘッセの『デミアン/エーミール・シンクレールの青春の物語』です。
軟弱で無邪気な主人公シンクレールは、級友であるクローマーという「悪」に目をつけられ、追いつめられていたところをとび色の髪をもつデミアンが助けられ、非行少年にならずにすんだのですが、その際、デミアンは聖書のカインとアベルの逸話において、カイン=悪という定説を否定し、カインは英雄であるという自説を述べ、それを聞いたシンクレールはこう聞きます。
うん――つまり――じゃ、カインは悪者じゃなかったのだね?そして聖書に書いてあるあの話はみんな実際はほんとじゃなかったのだね?
それに対しデミアンは、カインの額のしるしを「英雄的な抜きんでた、革命家的な才気のあらわれ」と定義づけ、自分やシンクレールにもそのしるしが備わっていることを指摘するのです。
今週のやぎ座もまた、そうして自身のしるしを見つけることで自己を探求していったシンクレールのように、心のままにおのれが欲するところを求めていくといいでしょう。
やぎ座の今週のキーワード
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