やぎ座
当たり前を少しずらす
※12月13日〜19日の占いは、諸事情により休載いたします。誠に申し訳ございません。
次回は12月19日(日)午後10時に配信いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ただごとではない背景
今週のやぎ座は、「焼芋や母にまされる友はなし」(ミュラー初子)という句のごとし。あるいは、何かが自然にそのようであることの奇跡性に思い当っていくような星回り。
共感するか、強烈に反感を持つかに分かれそうな掲句ですが、少なくとも焼き芋などの芋系スイーツを嫌いな女性はほとんどいないでしょう。
そういう意味では、ほっと心が温まるような穏やかな日常詠の典型のように思えるのですが、作者は太平洋戦争のさなか、スイスに夫と子を残して、京都の実家で母と息を潜めるように暮らしていたのだとか。
戦争が起きていようが、失業しようが、病気になろうが、生きてさえいればそこに日常はある。むしろ、そんなただごとではない背景が広がっている時こそ、そこに花を添えてくれる日常のちょっとしたことのありがたみや鮮烈さが増していくのです。
同様に、11日にやぎ座から数えて「身体性と紐づいた言葉」を意味する3番目のうお座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、当たり前といってしまえば当たり前のことほど、改めて大切にしてみるといいでしょう。
無への通路の開け
「日常の奇跡性に思い当る」には、ただごとではない事態が起きるなど、何らかのきっかけが必要ですが、それは「自分の中に無への通路を作る」(中沢新一)ということとも大いに関係しているように思います。
人間は、この世にそれなりの地位や立場を獲得していくと、とたんに世界を小さくして何か大層なものを“所有”しているような感覚を抱き始め、やがて天然や自然のままに自分を任せるということがよく分からなくなってしまいます。
もちろんクレカや預金通帳、定住生活そのものを投げ捨てろといっても、ほとんどの現代人には無理な話ですが、一方でやはりどこかで人間死ぬときはひとり、生まれてくるときもひとりという感覚を持っておかないと、いのちというものが本来どのように存在しているものなのか(一切無所有)、分からなくなってしまうのではないでしょうか。
無への通路が開けるときというのは、きっとそんな風に自分が根本的なところで「生かされている」存在なのだという実感が自然と湧いたときであるはず。
今週のやぎ座もまた、日常の風景を少しずらして見る視点を持っていきたいところです。
やぎ座の今週のキーワード
脱・所有幻想