やぎ座
この世界の内側深くへ
ディープ・ドリーム
今週のやぎ座は、浅い夢から深い夢への目覚めのごとし。あるいは、自分たちを夢見ているより根源的な夢にアクセスしていくような星回り。
オーストラリアの先住民であるアボリジニにとって、「夢」は現実をはるかに凌駕する神話的で神聖な領域であり、彼らにとって「現実」とは、大地の奥深く潜んでいる「夢」の世界に、形が与えられていくプロセスに他ならないのだと考えられています。
文化人類学者たちが採集したエピソードの中には、夢の中で隣人を殺した村人が、次の日、その出来事を村長に告白し、その村人が隣人に対する償いを命じられたというものもある。これはすなわち、夢は現実と等価どころか、夢の世界こそが真実であり、より重視されるという彼らの世界観を浮き彫りにしてくれています。
夢についてはこれまでも多くの言説が展開されてきましたが、それは睡眠中の脳の働きから夢の機能を分析するものだったり、夢は現実を生み出す要素であるとするもの、連綿と継承された太古の神聖に帰属するとした見解、そして願望や深層心理といった物語的世界に収斂されるなど、じつにさまざまです。
夢を語るということは、その時点ですでに「現実」を織りなしている多彩な制度的な規範に則っているために、私たちは実際に自分の見た夢をありのままに客観化できないというジレンマに陥ってしまうのです。
7月2日にやぎ座から数えて「心理的な基盤」を意味する4番目のおひつじ座で下弦の月を迎えていくあなたもまた、自分が現に生きている現実に先行している夢へと意識の焦点をずらしてみるといいでしょう。
「分かりやすさ」の外にあるもの
例えば、普通のメールのやり取りの中に、ポンと俳句をはさんだら、世間の大半の人はそれをなんか変だなと思うか、どう反応したらいいのか分からなくてスルーして終わってしまうはず。
けれど、人と人、いやそのおおもととなっている人と自然の関係というのは、本来そんなに簡単に分かり合えるものではありませんし、散文と散文のあいまにはさまっている一見意味不明な詩や俳句もまた、そんな分かり合えない相手(自然)をなんとか受け止め、取り込もうとする必死のもがきであり、声なき声をなんとか人の言葉に置き換えんとするコミュニケーション上のチャレンジに他ならないのだとも言えます。
その意味で今週のやぎ座は、コンクリートで固められた街のすきまを縫うように、路地裏や道のはしっこを流れている水路を通して、ふだんなら目にとめないものに目をとどめ、いつもとは少し違う角度から人と響きあう。そんな普段の文脈から大いに外れたコミュニケーションやチャレンジを大いに楽しんでいきやすいタイミングなのだという風にも言えるかも知れません。
やぎ座の今週のキーワード
「人は同じ川には足を2度入れることはできない」(ヘラクレイトス)