やぎ座
発語の成熟
揺るがなければそれでいい
今週のやぎ座は、「歌です」という少年の答えのごとし。あるいは、例え分かりやすい正解ではなくても、これという自分なりの答えを公開していくこと。
山下和美の漫画『不思議な少年』では、あらゆる時代とあらゆる場所に現れては、「人間」を見つめ続ける「少年」の姿が描かれていくのですが、その6巻に収録されている「THE MAN」というお話では、少年は神学校に潜入しています。
そこで、教師から「人類が手にした最も偉大なものはなにか?」と質問される。そして意識を縄文時代にまで飛ばし、とある青年の生活に密着することにします。
その青年が妹を殺された悲しみのあまりに咆哮した声がメロディとなるところを見届け、神学校に意識を戻して「歌です」と答える。
教師はそれを間違いとして、「人類の手にした最も偉大なものは信仰だ」と主張するのですが、少年の中ではこの答えこそが揺るがぬものとなっていくのです。
6月2日にやぎ座から数えて「顕在化」を意味する3番目のうお座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、誰かに話したり、書いたものを発表していくことで、やはり「揺るがぬもの」を作っていくことがテーマとなっていきそうです。
歌うこと風鈴のごとし
風鈴の中の鉄片。つまり音を鳴らすための肝心かなめの部品のことを「舌」と言うのだそうです。そして、その舌から短冊をかけて風を受けていく部分を長い「尾」と考えたというのだから、むかしの人というのはつくづく優雅だなぁと思わずにはいられません。
猫にしても、孔雀にしても、尾というのは時に鳴き声以上に雄弁なもので、もし人間に尾があったならこうした和歌も俳句も生まれていなかったでしょう。風鈴が、尾を失えば歌わない風鈴となるように。
逆に言えば、和歌や俳句などの形式の力を借りることで、人間は尾をはやすことができる訳で、舌と尾をそろえて調和させていくことが、歌うことに他ならないのだとも言えるかも知れません。
今週のやぎ座もまた、ここぞという時に魂の音色が響くよう、舌を鳴らし、尾をたなびかせることがごとく、自己調和を深めていくといいでしょう。
今週のキーワード
等身大の言葉を自分がラクな声色で発すること