やぎ座
新旧の現実がせめぎあう
屈折した空虚さ
今週のやぎ座は、「むしつてもむしつても捨(すて)春の草」(小西来山)という句のごとし。あるいは、これまで捨てきれなかった思いを手放していこうとするような星回り。
冬のあいだ枯れた草の下から、若草がむしってもむしっても惜しくないほど萌え出ている。そんな早春の光景を詠んだ句。
作者は江戸時代初期の人で、家族に次々と先立たれたのだと伝わっていますが、「むしっても」「捨て」という言葉の背後にどこか句全体に屈折した空虚さのようなものが感じられるのは、そうした作者の背景と相通じているのでしょうか。
もはや決して元通りになることのないながら心惹かれるかつての現実と、今まさにつくり出されたばかりの心許なくもすべてが目新しい現実。
二つの現実が溶けあいながらも、次第に後者に比重が移っていきつつあることを、作者もひしひしと実感して、だからこそやりきれない気持ちでいるのではないでしょうか。
3月6日にいて座から数えて「自然な忘却」を意味する12番目のいて座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、新旧の異なる現実が入れ替わっていきつつあることを実感していくはず。
自分とのかくれんぼ
例えば、過去の今よりずっと未熟だった自分や、どうしても許せなかったことごとが、まるでかくれんぼのように現在のあなたを取り巻く状況や、これから起きてくるだろう事態の中に潜んでいるのだと考えてみてください。
つまり隠れているのも自分ならば、それを見つけていくのもまた自分に他ならない。すると次第に、未来は過去の映った鏡となり、過去は未来の記憶として見えてくるでしょう。
そういう通常の「時間の流れ」が逆流しているかのような感覚の中で、あなたはかつて苦しかった頃、何をこの宇宙に誓ったのかを思い出し、逆に忘れるべきことは忘れていくことで再び一歩二歩と前進していく力強さを得ていくことができるはず。
そういう意味では、今週のやぎ座はまだまだ自分はそんな道の途上にいるのだと、改めて思い知ってゆく時なのだとも言えるかも知れません。
今週のキーワード
時間の流れが逆流していく感覚